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2011年5月 7日 (土)

本 「日米同盟の正体 -迷走する安全保障-」

北朝鮮の核武装化、中国の台頭(尖閣諸島問題含む)、ロシアとの北方領土問題などで最近周辺諸国との摩擦が増えてきています。
そういう中での政府の基本的な論調としては日米同盟堅持ですが、アメリカとの間でも普天間基地問題を始めとして積み残し課題があります。
日米同盟は日本の立場からすれば、日本が他国に攻撃された場合、アメリカが自国を攻撃されたと同じようにいっしょに戦ってくれることとなります。
尖閣諸島問題のときも、ヒラリー・クリントンは同様の発言をしていました。
けれどもアメリカが日米同盟と口にするとき、その根底にあるアメリカの戦略性を日本人がほんとうに理解をしているかということを本著は指摘します。
当然のことながら、アメリカは自国の国益を第一に考えるわけで、自国民の生命をかけてまで戦いを行うにはそれに見合ったものがなくてはいけません。
その彼らの計算(戦略)を理解しないで、盲目的に日米同盟と言うのは、リスクが高いのではないかということです。
筆者は基本的に日米同盟を支持します(僕も基本的にはそう)。
ただ彼らの意図というのを十分に考えないと、肝心な時に同盟が機能不全を起こすことなります。
本著でも取り上げられていた北朝鮮についてのアメリカと日本の考えの行き違いはなるほどと納得させられるところがあります。
本著の中盤にあるアメリカの陰謀論的な部分はちょっと眉唾感も感じますが、とはいえアメリカが大きな戦略をもって外交・軍事に挑んでいることはわかります。
それに対し、日本は自民党政権時代、また現民主党政権にいたっても、なんら戦略性をもっていないように見えます。
ある意味、初心な感じも受けます(社民党にいたっては理論ばっかりで現実をまったく見ようとしていない)。
現在のアジア情勢から考え、日米同盟は基本堅持だとは思いますが、アメリカの戦略をしっかりと観察していくというは正しい態度だと思います。
その中で、本著後半で著者が指摘していた、軍事以外での抑止力は僕としては読んでいて目からうろこではありました。
本著の中でもしばしば引用されていますが、キッシンジャーの言葉「抑制とは、得られる利益とは釣り合わないリスクを押し付けることによって、相手にある行動方針をとらせないようにする試みである」は元々は軍事についての考えでした。
相手が攻撃をしてきた場合、それ以上に強いダメージを与える力を持っているから、攻撃しない方がいいよということです。
1発殴ったら、10倍返しするよということですね。
しかし本著の提案の一つは軍事以外でもってこれを行うということです。
例えば、対中国ですが、現在中国は加速的に近代化を進めていて、中国脅威論がでてきています。
では中国が日本に戦争を仕掛けるかというとおそらくそういうことはない。
そうするほうが中国はリスクがあるからです。
というのは経済の問題です。
いまや日本と中国は密接に経済が結びついています。
もし戦争状態になった場合、当然のことながら経済交流はなくなります。
そうなると中国の輸出相手先として存在感がある日本との交易がなくなり、一気に中国経済は停滞します。
また経済制裁なども行われるでしょうから、さらに厳しくなります。
つまりは戦争をすることによって得られる小さな利益(小さな資源のない島国の領土、太平洋への入り口確保はそれなりに大きいが)よりも、背負うリスク(経済の停滞)のほうが大きいと判断されるはずなのです。
つまりは日本はアメリカが行っている軍事的な抑止策以外の手法で、抑止力を持つということができるのではないかという論です。
これはなるほどと思った考え方で、もしそれが戦略的に行われるのであれば、日本独自の安全保障となると言っていいかもしれません。
ただ先にあげた中国との関係性も戦略的に行っているわけではなく、民間の活動により結果的にそうなったということだけです。
政府が盲目的に日米同盟堅持というだけではなく、しっかりと日本らしい戦略的な安全保障に関する考えをもって行動すべき時期になっているのかもしれません。

「日米同盟の正体 -迷走する安全保障-」孫崎亨著 講談社 新書 ISBN978-4-06-287985-9

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