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2011年3月 9日 (水)

本 「冷たい密室と博士たち」

森博嗣さんのS&Mシリーズの第二作目になります。
一作目の「すべてがFになる」がかなりインパクトのある作品であったので、二作目はどうなるかと思いましたが、思いのほか正統派のミステリーになっていました。
正直、一作目ほどの新鮮さは感じられませんでした。
提示されるミステリー、そしてそれを論理的に詰めていって解決していくスタイルはまさに正統派です。
その謎解きが単純・簡単というようなものではないのですが、理詰めで積み上げていく感じはある意味安心感はあります。
一作目のようなどう転ぶかわからないようなところはあまりありません。
「すべてがFになる」は読みながら見ていた世界が反転するというか、ひっくりかえるようなところがありました。
同時期に注目された京極夏彦さんの小説はその後発表される作品でも、この世界がひっくり返る感じというのをどの作品でも持っていますが、そういう点は本作ではあまり感じられません。
行儀よく座っている感じがするっていうところでしょうか。
この行儀よさというのは意識的に行ったものなのか。
それとも一作目は奇跡的に生まれたストーリーであったのか(このシリーズは何作も書き進められているので、おそらくこんなことはないかと思いますが)。
このシリーズ、読み進めなければわからないのでしょう。

S&Mシリーズ「すべてがFになる」の記事はこちら→

「冷たい密室と博士たち」森博嗣著 講談社 文庫 ISBN978-4-06-264560-2

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コメント

森博嗣さんの「すべてがFになる」に続き、S&Mシリーズの2作目の「冷たい密室と博士たち」を再読しました。

「すべてがFになる」のほうは、覚えている部分もちらほらとあったのですが、この「冷たい密室と博士たち」については、ほとんど内容を覚えていませんでした。

内容を覚えていなかった理由は、再読してみて納得しました。
ものすごく地道なミステリとして書かれているからなんですね。

ただし、地道な内容だからと言って面白くないというわけではなく、むしろ非常にうまく作りこまれているミステリであるなと感嘆させられる出来になっていると思います。

最初に起こる密室殺人事件が、この作品の一番のキモですね。
それは、密室となった部屋で発見された二人の院生の刺殺死体。

その部屋に入るための出入り口は3つある。
シャッターについては壊れていて、動かすことができない。鍵のかかっていた非常口は、その鍵をかけるには中からしか施錠できない。
もう一つの出入り口も鍵がかけられており、こちらは外からも鍵により、開け閉め可能であるが、鍵の数は限られている。

こうした状況により、密室とされる事件の謎を特に西之園萌絵が積極的に解明しようとし、それに犀川と喜多助教授が追従していくという形で語られていくんですね。

中盤は事件が起こらず、さらには推理も膠着してしまうので、やや退屈に思えたものの、後半にもうひとつの密室殺人事件が起こり、そこから物語は加速していき、一気に解決編へ突入していくんですね。

事件の解決については、実にまっとうなミステリという感じだったと思います。
派手さはないものの、良くできている真相でしたね。

また動機についても、複雑な人間関係が浮き彫りになるように描かれています。
その複雑な人間関係を、敢えて物語の進行中においては過剰に書き表わさず、さらっと描いているところは、社会派ミステリとは異なるものであると感じましたね。

そういった全てを包括して、これこそ“理系ミステリ”であると感じさせるものになっている作品だと、あらためて思いましたね。

投稿: オーウェン | 2024年1月10日 (水) 16時28分

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