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2011年2月11日 (金)

「洋菓子店コアンドル」 直球な女

主人公なつめ(蒼井優さん)は思ったことをそのまま口に出し、そして思ったことにまっしぐらに突進していく女性です。
ど真ん中直球な物言いは、人によっては「カチン」とくるように受け止められるかもしれません。
正直、こんな子が自分の近くにいたら僕は「カチン」ときてるでしょう。
でもそれはなつめが自分の思うことにとっても正直で忠実だからなんですよね。
思えば人ってのは、いろんな付き合いがあったり、しがらみがあったりで、自分が思ったことを呑み込んでしまったりするものです。
そのまま口にしていたら、なつめが周囲をザワザワさせたように、やはり人間関係に波風がたってしまうでしょう。
でもあまりに呑み込みすぎてはないかい?とも思ったりもします。
なんとなくベールで包んだような言葉で話していると、そこには見えない壁みたいなものもできていたりするんですよね。
都会で孤独に感じる人が増えているっていうのは、そういう気を使いすぎてできている壁みたいなものがあるからかもしれません。
そういう壁をなつめはズケズケと突破して侵入してきます。
それがウザかったりするわけですが、けれど彼女自身も開けっぴろげで壁などないことがわかります。
そういう壁のなさ、みたいなものが心地よいのかもしれません。
十村も子供の事故以降、周囲に壁を作っていた人間の一人です。
なつめは彼の壁も直球で正面突破し、頑な彼の心を解きほぐすのです。

蒼井優さんは、そんななつめにぴったりの配役であったと思います。
彼女の女優としての素晴らしさというのは、他の作品でもそうなのですが、まるですっぴんのように見えるということ。
テクニカルに作り込んだ役作りというのとは違う、またその人になりきってしまうようなカメレオン系の女優さんとも違う。
うまく言えないのですけれど、彼女がある役をやっているとき、蒼井優という人の素というのはこの役なのではないかと思わせるところなんですよね。
それだけに役に自然であるということなのかもしれません。
この作品のなつめという役は、ちょっとKYな女の子で、大いに怒り、大いに泣き、大いに笑う、自分の気持ちに素直な子。
その怒っているときの表情や、泣き顔、微笑みなどがすべて、なつめという女の子がそのように感じているからしている表情っていう感じがするんですよね。
普通の女優だったら、演じているとき見られる視線というのを気にした上での、怒り、泣き、笑いの表情をするのだと思うのですが、彼女の場合はほんとにすっぴんの表情を見せているような感じなのです。
当然、演技なわけなのですが、演技っていうのを越えちゃっているように見せるというのが、蒼井優という女優のすごさなのかもしれません。

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コメント

sakuraiさん、こんばんは!

あれだけ一所懸命にやれるのは羨ましいですよね。
でも確かにすぐそばにいるとうざいかも。
特に元カノだったら・・・(笑)。

投稿: はらやん(管理人) | 2011年4月29日 (金) 07時17分

空気読めないって、今は悪のように思われますが、それくらい自分が好きで、つき進めるって、いいですよね。でもやっぱうざいかも・・。
うざさを感じさせるのが狙いでしょうから、いいのだと思いますが、半パティシェとしては、いろいろとケーキ作りには異存があります。
もうちょっと材料も大事にしてもらいたかったですわ。

投稿: sakurai | 2011年4月26日 (火) 20時54分

maru♪さん、こんにちは!

確かに僕も漫画が原作なのかなーって思いました。
やはり蒼井優さんの女優としての力を感じました。
なかなかあのキャラクターを嫌みなく演じれる人はなかなかいないですよね。

投稿: はらやん(管理人) | 2011年2月20日 (日) 07時29分

こんばんわ♪

あまりのキャラの立ち具合に、てっきり漫画原作かと思ったらオリジナルでした。
正直、前半はなつめのあまりの猪突猛進ぶりについて行けず困ったなと思ってました(笑)
それでも、嫌な子にならなかったのは蒼井優ちゃんのおかげだと思います。

作品全体としては後半やけに早足になってしまって、せっかくの素材を生かせなかったのが残念な気がしました。

投稿: maru♪ | 2011年2月20日 (日) 02時53分

こにさん、こんにちは!

蒼井優さんはほんと天性の女優さんですね。
けっこう今回のは普通にはいないタイプの女の子なんですけれど、それでも全然うそくなく、そしてそれが蒼井優の素なんではないかと思わせるところまでもっていくのがスゴいです。
ぜひ、ご覧になってください。

投稿: はらやん(管理人) | 2011年2月13日 (日) 07時07分

観たいと思っている映画です
蒼井優さん、天野祐吉さんだったかがポテトチップスのCMを誉めてらっしゃいましたが、本当に「すっぴん」で勝負できる女優さんですね

投稿: こに | 2011年2月12日 (土) 13時36分

KLYさん、こんにちは!

蒼井優さんはほんとうまいです。
演じているって感じさせないくらいなのが素晴らしい。
薩摩弁って男の人がしゃべるのは映画やドラマでよく見ますが、女性でしゃべっているのを見るのは新鮮かも。
パンフでも蒼井さんは薩摩弁がたいへんだったとおっしゃっていましたが、そういうたいへんさを感じさせないくらい身に付いているのがすごいですよね。

投稿: はらやん(管理人) | 2011年2月12日 (土) 11時18分

蒼井優って方言での演技がいいんですよね。『フラガール』の時も良かったし。江口さんがおっしゃってたのですが、薩摩弁だから言いたい放題言っても何だか許せてしまう雰囲気の女の子なんだと。これが東京の女の子だったらただの嫌なヤツになってしまうと思うって。確かにそうだろうなと思います。もっともそこを上手く演じられる技量があるかどうかと言う部分でやっぱり蒼井優という女優の上手さが光るんだと思うのですけども。

投稿: KLY | 2011年2月11日 (金) 21時01分

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