「ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島」 アスラン王はワイルドカード
1作目、2作目と食い足りないと言ってきた本シリーズですが、性懲りもなく観にいってきてしまいました。
食い足りなさは相変わらずではなくて、さらに輪をかけて食い足りなくなってました。
「ハリー・ポッター」シリーズや「ロード・オブ・ザ・リング」以外のファンタジー映画作品のシリーズって第1作でコケて2作目が作られないというパターンが多いですが、本作はどうして続けていけるんだろう?
制作会社に意地のようなものがあるのでしょうか。
1作目は白い魔女からナルニアを救うという戦い、2作目はテルマール人との戦いという、物語として太い軸のようなものがありました。
本作はなんで冒険しているのか、逼迫した感じというのがいまいち感じられませんでした。
説明されていないわけではないのですけれど、前二作のようなナルニア国がなくなってしまうかもしれないというような危機感ではないのですよね。
だから物語そのもののドライブ感が弱いのではないでしょうか。
島々を廻っていく一行が、なんかスゴロクやって一コマづつ進んでいくような感じがしました。
これなら全然「ワンピース」のほうが面白いじゃない。
あとこのシリーズ自体が持っている物語の弱さというのは、アスラン王だと思います。
C.J.ルイスはアスラン王はキリストをイメージして書いたと言われています(本作でもアスラン王がそれを匂わせるようなことを言います)が、そうだとするとナルニア国ではアスラン王は神様のような存在なわけですよね。
神様なら何でもできるわけで、物語としてはワイルドカードとして使えちゃうわけです。
実際に過去2作も、本作もアスラン王をまさにそのように使っています。
しかしそれにより、主人公たちがいくら追い込まれてもアスラン王が救ってくれるよね、というような感じがあり、観る側にも切迫感がなくなるんですよね。
「ハリー・ポッター」のハリーにせよ、「ロード・オブ・ザ・リング」のフロドやアラゴルンにせよ、彼らは自ら決断しなくてはいけない立場に追い込まれ、そしてその決断がその後の自分自身、仲間たちの運命を左右するものになります。
だからこそ観ている側も、力が入ってしまうわけで。
そういう点から観ると、本シリーズはやはりおとぎ話的で、最後は「めでたしめでたし」となるのだろうという予定調和が端から見えてしまいます。
安心感はありますが、それは物語が緊張感を失うということにも繋がります。
まさに本作はそうなってしまっているように思います。
あと3Dですが。
「アバター」のヒット以来3D映画がたくさん作られていますが、品質がよくないものが多すぎます。
本作も3Dにする意味がわからないし、その効果もあまり感じられません。
客単価をあげたいという興行側の狙いが見えすぎてしまって、なんだかなぁという感じがします。
「いっしょにすんな!」とキャメロンが怒るのもわかります。
質の低い3Dを連発することにより、3D=高いわりに迫力ない、いうイメージがついてしまったら、客足は離れていきます。
ブームに乗りたい気持ちはわかりますが、なんでもかんでも3Dにするのではなく、きちんとした品質の作品をリリースするということを真剣に考えて欲しいと思います。
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