「レッド・オクトーバーを追え!」 見えない敵との駆け引き
テクノスリラーの第一人者トム・クランシーの小説の映画化作品。
主人公の名をとり、ジャック・ライアンシリーズと言われていますが、その第一作品です。
映画で本作のあと、ハリソン・フォード主演でこのシリーズは「パトリオット・ゲーム」「今そこにある危機」「トータル・フィアーズ」と続編が作られていきますが、僕はこの一作めが一番おもしろいと思っています。
主人公のジャック・ライアンもハリソン・フォードより、本作のアレック・ボールドウィンのほうが自分の中ではイメージに近いんです。
ハリソン・フォードはやはりどうしてもヒーロー然としてしまうので、困難にあたっても解決できちゃいそうな感じがしてしまうので。
潜水艦ものというのは昔から名作が多いですよね。
「眼下の敵」「Uボート」「クリムゾン・タイト」・・・。
高い圧力の海水に囲まれた限定空間の中での緊張感、また見えない敵との駆け引き・やりとりという要素が映画をおもしろくするのでしょう。
本作ではソ連(!映画公開のときはまだ冷戦中)の新型ミサイル原子力潜水艦「レッド・オクトーバー」の艦長ラミウス(ショーン・コネリー)が原潜ごと亡命を企てます。
それを防ごうと隠密裏に軍を差し向けるソ連、またその動きを察知するCIA、米軍。
CIAのアナリストであるジャック・ライアンは、ラミウスの亡命の意志を直感し、彼と最新鋭潜水艦を傷つけずにまた平和裏に手に入れようと画策します。
映画はラミウスサイド、ジャックサイドと交互に描かれていきますが、互いに相手の意図が不明な中での駆け引きを行っていくあたりが緊張感があります。
その駆け引きも十分見ごたえありますが、また潜水艦同士の戦いも見所のひとつ。
最初の方のラミウス艦長の海溝での操船術を見せるシーンは緊張感があり、好きな場面です。
また後半の方の潜水艦同士の戦いは、水中のドッグファイトともいえるようなところもあり非常にカッコいいです。
ソ連潜水艦がレッド・オクトーバーに魚雷を撃って、それを撹乱させるために米海軍のロサンジェルス級潜水艦ダラスが割って入るところも好きなシーンなんですよね。
この映画が公開されたのは1985年。
ソ連崩壊が1991年ですから、さきほど書いたように公開時はソ連の脅威があったと言われていた時期でした。
あとから見てみると、1985年あたりで最新鋭の原潜など作れるような状況ではソ連はなかったわけなのですが、その頃は冷戦中ですから、アメリカからすればそれこそ見えない敵ではあったんですよね。
見えない中で駆け引きがあるのが政治で、そういう意味では潜水艦同士の戦いというのは政治の縮図なのかもしれません。
本作までくらいがソ連が明確な敵として映画で描かれた最後の時期ですよね。
その後は強力な敵がいなくなったおかげで、ハリウッド映画は敵探しに苦労していくということになるわけです。
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