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2011年1月30日 (日)

本 「追伸」

非常によく構成された小説だと思います。
一組の夫婦の間、そしてその祖父母夫婦の間での往復書簡だけで本作は構成されています。
現代は手紙ではなく、電話、そしてツィッターやSNSなどコミュニケーションの高速度化が進んでいます。
けれどもそれによって考えなしに言葉をだしてしまったりしてこじれたりすることも。
手紙(メールもそうだけど)というのは、相手に書く前にじっくりと自分の心と対面する時間があります。
そこで冷静になって考えてみたり、書こうと思って書かなかったり。
そこには自分の思いもあり、また相手に対する想いもあり。
また手紙のやりとりは相手の手紙に対して自分が感じたことを相手にすぐ伝えることができません。
だからこそ、相手の言葉をじっくりと考える時間ができるのですよね。
そういう時間が、手紙ダイレクトにすぐに繋がるコミュニケーション手段と違うのだなと思いました。
本作はミステリーになるとは思いますが、一組の夫婦が自分たちの将来についてそのやり取りの中で、見つめていく様子が描かれています。
自分は所帯を持っていないので、なんとも言えないのですが、夫婦といえど、すべてを話しているということもないでしょう。
それよりも自分でも気づいていない自分の中の思いというのもあるのかもしれません。
本著に登場する二組の夫婦は、それぞれ相手との手紙のやり取りのなかで、自分が気づいていなかった自分の思いに気づかされます。
それぞれがその思いに対し、誠実に向き合い、そしてその上で夫婦としてどのように歩んでいくのかということを手探りながらも決めていこうとする過程が描かれるのです。
多かれ少なかれどの夫婦も、別々の人間ですからこのような思いのズレみたいなものはあり、なんとなくこんなものだと納得するか、もしくは我慢できずに別れてしまうという結論を出すのでしょう。
本作の登場人物はどのような決断を下すにせよ、互いに真摯にお互いの関係そして、自分の思いを見つめていきます。
それが何か尊敬できるというか、こうあれればいいなと思えました。

「追伸」真保裕一著 文藝春秋 文庫 ISBN978-4-16-713114-2

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