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2011年1月 8日 (土)

「キングダム・オブ・ヘブン」 完璧な人格者は感情移入しにくい

昨年末にリドリー・スコットの「ロビン・フッド」を観たので、彼の史実ものを観たくなりこちらの作品をレンタルしてみました。
舞台となっているのは十字軍によって樹立されたエルサレム王国。
そのエルサレムがイスラム勢力によって陥落させられた時代を扱っています。
十字軍というのは教科書レベルでは知っていますが、その具体的な内容については多くの日本人は詳しいことは知らないでしょう。
また遠路はるばる宗教的大義のためにエルサレムまで渡り、そこで戦いを繰り広げるというキリスト教信者の気持ちについてもなかなか共感するというか、腹に入る感じはないのではないでしょうか。
僕もそういう日本人の一人であるため、本作の時代背景がわからないため、やや物語に入り込むのに苦労をしたところがありました。
映画を観た後、エルサレム王国についてwikipediaでチェックしたところ、ほぼこの映画で描かれていた出来事は史実だったようですね(もちろん主人公バリアンなどは創作)。
ただエルサレム王ボードゥアン4世は賢王であったが病弱で早世し、彼の妹婿のギー・ド・リュジニャンが王を継ぎ、イスラムのサラディンに戦いを挑みますが大敗をし、その後エルサレムが陥落したという流れは歴史の通りのようです。
こういう歴史についてほぼ知らない状態で観たのですが、それでも145分という長尺を一気に見せてしまう手腕はさすがリドリー・スコットというところでしょう。
先に「ロビン・フッド」を観てしまったので、全体的な盛り上がりという点ではややもの足りなさを感じますが、物語を押し進めるパワーは感じます。
盛り上がりにややかけるというのは、ひとつは主人公バリアンの性格設定というところもあるでしょう。
バリアンは非常にストイックであり、正義というものに忠実で騎士であろうとします。
騎士としてのまっすぐさ清廉さが彼のパーソナリティですが、そこに一分の隙もなく、観ていて自分と共感するというのはなかなかしにくいキャラクターだなと思いました。
まさに聖者という感じなのですよね。
その点、現在公開中の「ロビン・フッド」の場合では、主人公はカリスマ性のある指導者でありながらも、人間くささもあり、だからこそ共感でき、物語のなかで描かれる戦いにも観客は入り込んで観ることができたと思います。
その点で、この作品はとっつきにくさといものがあったような気がします。
そこについては多分リドリー・スコット自身も自覚的であったと思います。
エルサレム王がバリアンを評価し、自分の妹シビラを離縁させ、一緒になるように薦めます。
けれどもバリアンはシビラに好意を持ちながらも、騎士として人として道に外れることを拒みます。
シビラ自身もバリアンに好意を寄せていましたが、結局エルサレム王の死後、夫のギーに王位を授けます。
ギーは元々イスラムとの主戦派であったため、それによりエルサレム王国は戦いに巻き込まれることはシビラもわかっていたはずです。
シビラはわかっていながら、ある意味バリアンに捨てられたという想いの中、ギーへ王位を渡すことは彼女なりの腹いせであったような気がしました。
しかしそれで起こった戦の中でもバリアンは常に騎士として、人々の命を守るため、死力を尽くして戦います。
その姿を見ている中でシビラ自身は自分の小ささというものに気づき恥ずかしさを感じたのでしょう。
髪を切り、負傷者を助けようとするするシビラの姿にそれを感じました。
ただ恋愛感情のある二人の間でさえ、シビラから観てもバリアンは高潔すぎなかなか寄り添いにくいという印象を観客に与えることは確かです。
あまりに完璧な人物というのはなかなか物語に引き込むのは難しいものなのだなと改めて思いました。

リドリー・スコット監督作品「ロビン・フッド」の記事はこちら→

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» 『キングダム・オブ・ヘブン』(2005) [【徒然なるままに・・・】]
お話の舞台となっているのは1184年で、これは第2回と第3回の十字軍の間の出来事。そして主人公のバリアンをはじめ、国王ボードワン4世、その妹・王女シビラ、シビラの夫で後に国王となるギー・ド・リュジニャン、ギーと共謀することとなる貴族ルノー・ド・シャティヨン、サラセンの王サラディンなどは皆、実在の人物。事実に即しながら、時には大胆な脚色を施して紡ぎあげた一大叙事詩なだけに、やはりある程度は世界史の知識がないと辛い。知らなければ全く楽しめないか、というとそうでもないが、やはり十字軍の謂れ、キリスト教とユ... [続きを読む]

受信: 2011年1月 9日 (日) 21時31分

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