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2010年12月31日 (金)

本 「悪人」

今年2010年の僕の選んだベスト10の映画の中にもランクインさせた「悪人」、原作小説を読みました。
ストーリーの展開はほぼ映画と同じですが、やはり小説と映画の違いは当然のことながらありました。
小説の方が登場人物が多く、そして彼らの祐一や光代、佳乃に対するそれぞれの見方というのが独白で入ってきます。
他人がその人をどう見ているかというのは、その人自身のものの考え方や、こうあって欲しいというフィルターを通して見るわけなのでそれが正しいかどうかはわかりません。
いろんな人に聞けばそれぞれ違った人物像というのが出てくるものです。
小説はそういう人が人を見るときのどうしようもない壁の存在というのを感じさせてくれました。
祐一と光代はそれを越えようとしますが、結局は魅かれあう二人でさえそれを越えることはできません。
その壁は、人間である限りどうしようもないものなのかもしれません。
それでも小説は親切で、祐一がとった行動にあった彼の気持ちというのが、祐一と光代の独白により直接的ではないにせよ想像をすることができます。
それは僕が映画のレビューのところで書いたものと同じものだと思います。
逆に映画はそれすらほんとうにそうだったのか確信が持てない終わり方だったわけです。
それはいけないというわけでなくだから良かったのではないかと。
所詮、人は他の人がどう考えているかというのはほんとうにはわからない。
それは小説でも伝えようとしていたことではないかなと思います。
映画はそれをセリフなどによる語りではなく、妻夫木さんの表情のみで伝えようとしていました。
それを観客はどういうふうに考えているのかを読み取ろうとする。
人はその表情や行動しか見えないのですから。
そういう点で、人というものが持っているどうしようもない壁を、小説は小説らしく、映画は映画らしく、伝えようとしているのが「悪人」であったと思います。

映画「悪人」の記事はこちら→

「悪人<上>」吉田修一著 朝日新聞出版 文庫 ISBN978-4-02-264523-4
「悪人<下>」吉田修一著 朝日新聞出版 文庫 ISBN978-4-02-264524-1

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