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2010年11月28日 (日)

「龍馬伝」 フィクションとリアリズムを上手く噛み合わせた

最近はとんとテレビドラマを観ることがなくなっているのですが、そういう状況の中、毎週楽しみにしていたのがNHK大河ドラマの「龍馬伝」。
最近の大河ドラマだと名作だと思ったのは「篤姫」でしたが、自分の中ではそれを越えました。
ちなみに僕の個人的な法則で、NHK大河ドラマのアタリハズレは1年ごとというのがありまして。
最近では06年「功名が辻」(アタリ)、07年「風林火山」(ハズレ)、08年「篤姫」(アタリ)、09年「天地人」(ハズレ)という評価でした。
ですので今年はアタリという年のはずなのですが、アタリもアタリ、大アタリとなりました。
それだけ今年の「龍馬伝」はよかったです。

昨年「天地人」のレビューを書いた時の記事のタイトルは「リアリズムとフィクションの間の難しさ」としたのですが、「龍馬伝」はリアリズムとフィクションをとてもうまく使いこなしたのが成功の要因だと思います。
まずフィクションという点での巧みさが最もわかりやすいのはそのキャラクター造形でしょう。
坂本龍馬を始め、彼が自分の道を進むうちに出会う人々がそれぞれに魅力的に描かれていました。
いわば「キャラ立ち」していたと言えるでしょう。
言ってしまえば時代劇臭くないとでもいいましょうか。
ある意味、坂本龍馬という人物が夢をかなえるまでの青春物語と観てもいいわけです。
幕末に生きた歴史上の人物のキャラクターをリアリティを持って描くのではなく、ある意味現代人でもわかりやすいキャラクターとして造形し直しているのが、これだけ多くの人に話題になったということに繋がっていると思います。
これは脚本の力によるところが多いと思います。
そして脚本が生み出したキャラクターにあてたキャスティングも素晴らしかった。
こちらの記事を書く前に特によかったキャスティングをいちいちあげようかと思いましたが、あまりに多くて止めました。
それでもやはり挙げなくてはいけないのは主人公坂本龍馬を演じた福山雅治さんでしょう。
福山さんは歌手でありながらも、俳優としての演技力が確かなのは今までの作品でもわかっていましたが、まさにはまり役と言えるほどに坂本龍馬にはまっていました。
本作の坂本龍馬は自分が思い立ったら、それに向かって突っ走ってしまう男です。
そしてそこで出会う人々男女限らずをその人柄から夢中にさせて(弥太郎に言わせれば人たらし)、人を集めていく不思議な魅力を持った人物として描かれています。
女性にもてる男の人、これはいる。
同性が憧れたり、慕ったりする男の人、これもいる。
けれども女性にも男性にも慕われ好かれる人というのはなかなかいないもの。
そのなかなかいない人のひとりは福山雅治さんかなあと思います。
女性からみたランキングではいつも上位が定番の位置になっていますが、パーソナリティをしているラジオ番組などでのあけすけなトークは男性からみても共感できて、けっこう男性でも好きな人は多いですよね。
そういう福山さんにあてて書いたようなのが、まさに本作の坂本龍馬であったかなと思います。
あとはやはり岩崎弥太郎を演じた香川照之さんでしょう。
最近はアクの強いキャラを演じさせたら右に出るものはいないという香川さんですが、本作も岩崎弥太郎もまさにぴったりの役でした。
最初の頃の汚さ加減は半端なく、三菱からは「あれは行き過ぎではないか」とクレームがあったとも聞きます。
それでも最後まで龍馬に対して愛憎が混じりあった感情を持ち続けた複雑な役柄を香川さんはしっかりと演じてくれたと思います。
他にも素晴らしいキャスティングはいくつもあったのですが、ちょっとだけ書いてみましょう。
吉田東洋の田中泯さん、山内容堂の近藤正臣さん、勝海舟の武田鉄矢さん、高杉晋作の伊勢谷友介さんなどは特によかったです。
どうしても幕末の時代劇は、かなり様相が激しく変わり、そして登場人物も多いため歴史が好きじゃない方は敬遠されたりします。
けれども、本作は先に挙げた素晴らしいキャラクター造形、キャスティングにより現代人でもわかりやすい物語(フィクション)になったのが人気の秘密なのでしょうね。

あと逆にリアリティにこだわったのが映像や、背景だと思います。
特に映像はハイビジョンを意識した映像になっておりました。
ある意味「よく見え過ぎる」というハイビジョンの特性をフルに生かし、肌についた汚れ、脂汗などを容赦なくアップで映すというようなことをしていました。
女優さんからするとかなり厳しい環境だったと思いますが、それでもつるつるに加工された肌ではなく、まさにそこにそういう人物がいるのだというリアリティを与えてくれていたと思います。
照明もかなり思い切っていて、夜のシーンなどは余分な光はあまり使っていなかったように思います。
通常のフィルムやビデオだと写らなかったり荒れてしまうような光量でも、ハイビジョンならば映し出せるので、そういうこともわかって撮影しているように思いました。
テレビドラマでありがちな作られた世界という感じをその試みは払拭しようとしていたように思います。
そして手持ちカメラをかなり多用していたように感じました。
それらの試みにより、観ている視聴者も幕末の時代が動き出そうとしている息吹のようなものをそこにいるかのように感じることができました。
他にもこだわりを持ってやっていた各地の方言などもリアリティを出すことに機能していたと思います。

キャラクター作りは時代劇らしくないキャラクターでフィクションとしてのわかりやすさを追求し、映像などの舞台装置や背景では徹底したリアリズムを訴求する。
これが上手に噛み合わさって今までにないタイプの時代劇を作り上げてくれたように思います。
これからの時代劇の中では一つの目標とされる作品となった気がします。

09年NHK大河ドラマ「天地人」の記事はこちら→

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コメント

tarouさん、こんにちは!

まさに燃焼したと言えるような生き様でしたよね。
龍馬は死んだときは30前半だったと思いますので、ほんとに短い間にさまざまなことをやってのけたんですよね。

投稿: はらやん(管理人) | 2010年12月 5日 (日) 11時19分

龍馬も中岡もおの若さで燃焼しましたね。

投稿:  tarou | 2010年12月 5日 (日) 10時30分

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