本 「謀略法廷」
久しぶりにジョン・グリシャムの作品を読んでみました。
初期の作品は「ザ・ファーム -法律事務所-」など映画化もいろいろされていて傑作も多い作家です。
ある化学メーカーの長年にも渡る泥鰌汚染で、ある地域の住民でガンなどが多発。
住民は化学メーカーを訴え、損害賠償裁判で勝利します。
しかしメーカーは最高裁に上告、そこでの逆転無罪を狙います。
けれどもそのままの状態では敗北は明らか。
メーカーは驚きの一手を打ちます。
最高裁は9人の裁判官による評決になります。
そのうち4人はメーカー側へ有利な意見を言う見込みがあり、残りはその逆。
ならば5人のうち一人を自分たち寄りの裁判官にしてしまえばよい。
そこで裁判官の選挙で、現職を敗北させ、自分たち寄りの裁判官を当選させようとメーカーは画策するのです。
裁判は裁判の現場で証拠や証言にもとづき真理を議論されるというのが、皆が認識していることでしょう。
けれども現実は裁判以外の場面で結果がコントロールされている可能性があるという問題提起をしているのが、本作になります。
後味がけっこうよくないです。
正直住民側に最後はハッピーな結果が訪れるものだと思っていたのですが、そうはなりません。
しかし、それこそが自分たちが知らないだけであって、実際にそういう裁判所外での謀略が行われている可能性があるという指摘を作者はしたかったのでしょう。
そういう意味ではかなり衝撃を受けるラストであり、問題提起という点では効果的であったと思います。
でもね、後味がよくないのはちょっと・・・という感じはしました。
「謀略法廷<上>」ジョン・グリシャム著 新潮社 文庫 ISBN978-4-10-240925-1
「謀略法廷<下>」ジョン・グリシャム著 新潮社 文庫 ISBN978-4-10-240926-8
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