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2010年11月20日 (土)

本 「告白」

中島哲也監督の映画版もすごいと思いましたが、原作本もさすが本屋大賞をとるだけのことはあってよくできていると思います。
タイトルが「告白」とあるように、本作は章ごとに主要な登場人物が誰かに(直接、間接的に)語りかけているという体裁をとっています。
この「語りかけている」というのが、いわゆる一人称スタイルの小説とは違った風合いを出しているような気がします。
この作品に近い感覚としては、ジャンルは異なりますがアガサ・クリスティの「アクロイド殺し」などがあげられると思います。
語っている主体が話している内容は全部事実のように感じられがちですが、これはそうとは言い切れません。
語っている内容は「まぎれもない事実」「本人が事実だと思い込んでいる事実」「本人が意識的に嘘をついている事実」だったりします。
また「あえて本人が伏せている事実」もあります。
この作品の中では語りの手法として、実際にしゃべているというのもありますが、日記やHPなどでの語りもあります。
これは直接会話ではありませんが、読み手を意識しているということでは同じです。
なぜ「まぎれもない事実」しか語らないかと言えば、それは話している主体が、話している相手に自分自身をこのように思ってもらいたいという意志が働いているからでしょう。
もしくは自分自身もこのようであると無意識的に思っていたいということもあるかもしれません。
そういうことは日常的にも自分自身の中にもあることだろうと思います。
自己というフィルターが、事実を無意識的に歪ませてしまうということが。
この作品はそれを小説ならではの手法で、見事に描いているなと思いました。

原作小説を読んだ後、改めて映画版が非常によくまとまっているなと思いました。
小説は小説ならではの技法を通じて人間の自己像への執着みたいなものを描きましたが、映画では同様の手法は使えません。
けれども作品自体のテーマや伝えたいことはほとんど変えずに、映画として再構成し直すことができた中島監督の手腕に脱帽です。

映画「告白」の記事はこちら→

「告白」湊かなえ著 双葉社 文庫 ISBN978-4-574-51344-8

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コメント

rose_chocolatさん、こんばんは1

おっしゃるとおり、映画は原作ありとしてはかなりレベルの高い作品ですよね。
原作は小説ならではの描き方をし、それを踏まえて映画は映画ならではの描き方をする。
ただ伝えようとするもののコアは基本的にぶれていないわけで。
この原作をあのような映画として作った中島監督の手腕に驚きます。

投稿: はらやん(管理人) | 2010年11月21日 (日) 21時05分

淡々と語っているからこそ、逆に恐ろしくなるんでしょうね。
映画は、この原作の世界に忠実に、立体感を出していて、
例を挙げるならば、少年たちと悠子の娘がプールで繰り広げるシーンなどは、
まさにその通り! とうなずいてしまいました。

書籍の映画化としては、これを超えるものは当分出ないでしょうね。

投稿: rose_chocolat | 2010年11月21日 (日) 07時11分

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