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2010年10月24日 (日)

本 「平成関東大震災 いつか来るとは知っていたが、今日来るとは思わなかった」

「亡国のイージス」等で知られる福井晴敏さんによる、首都直下型地震が起こった場合のシミュレーション小説です。
主人公は普通のサラリーマン、西谷久太郎。
営業活動中出先の都庁で大規模地震に遭遇し、なんとか命は助かったものの、ほぼ首都は壊滅状態となり、交通網はズダズタに。
西谷は新宿から、自宅の墨田区へ徒歩で向かいます。
数年前、東京での地震を想定した徒歩帰宅マップが売れた時がありました。
東京で大地震が起これば公共交通はほぼストップ、道路は災害対策のため一般車両は通行不可になるため、住民は徒歩で帰宅しなくてはなりません。
僕が住んでいるのは東東京のため、職場から自宅に帰るためには川を渡らなくてはいけないのですが、果たして無事に帰れるのでしょうか・・・。
と思いながら、サブタイトルにあるように「いつか来るだろう」と思っていたりはするのですが、ちゃんと準備をしているかと言えばしていないというのが、実際のところです。
本著はそういう一般的な人々への啓蒙という意味合いも強いのでしょう、小説の間に首都圏で大地震が発生した場合に気をつけなくてはいけないことなどの有用情報も合わせて掲載されているので、参考にはなります(とは言いながら何もしていない自分ていうのも、なんだかなあ・・・)。
災害時のシミュレーションや、そのような有用情報だけではなくて、この作品のポイントは後半の復興部分にあるのかなと思いました。
たとえ東京で大地震が起ころうと、それはこの世の終わりではありません。
実際、東京はこの百年で大正の大震災、そして太平洋戦争の空爆などで二度も壊滅的な打撃を受けています。
けれども今ではそのあと影は感じられないほどに東京は発展しています。
この作品で書かれているように復興に大事なのは、ありきたりなのですが、やはり助け合い・互助の気持ちなのですね。
災害時は交通網ではなく、情報網も壊滅することが予想されます。
確かな情報がないとき、人間は流言などに惑わされやすくなります。
また自分や家族の生命だけを最優先に考えやすくなったりもします。
大正の大震災のときも、地震や火災と言った直接的な被害ではなく、そういうことにより命を落とされた方がいらっしゃいます。
先日起こった奄美大島の大雨による災害の復興作業が始まっていますが、島内のボランティアにより災害の多かった地域に向け衣服などが数多く寄せられているとのこと。
災害時のサバイバルというと自分の身だけを守ることばかりを考えがちですが、結局は自分だけでできることなどそれほど大きくはありません。
力を合わせてこそ、復興はできる。
災害時に意識しなくてはいけないのは、理性を保つこと、そして協力しあうということなのでしょう。
本作で西谷が経験したように、大地震が起こったとき何も失わない人などたぶんいません。
その喪失感を埋めるためにも、自分も他人も生きるために何かをする、という目的意識が大切なのかもしれません。
大災害が起こっても世界の終わりではない。
その後の希望を持てるかどうかが大事なのです。

「平成関東大震災 いつか来るとは知っていたが、今日来るとは思わなかった」福井晴敏著 講談社 文庫 ISBN978-4-06-276773-6

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現代の東京を突如として襲った直下型地震とその顛末を真面目にリアルに描いたアニメー [続きを読む]

受信: 2010年10月30日 (土) 20時04分

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