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2010年10月 2日 (土)

「恋愛戯曲~私と恋におちてください。~」 人は何故に書くのか?

鴻上尚史監督の恋愛コメディ。
鴻上監督の作品を観るのは、「ジュリエット・ゲーム」以来?
えらく久しぶりです。
ちらりと観た予告編がおもしろそうな感じだったので、観に行ってきました。
観に行ってきましたが、おもしろかったかと問われれば・・・。
恋に落ちないとラブストーリーが書けない人気女流シナリオライターの谷山真由美(深田恭子さん)。
彼女の無理難題に振り回されるテレビ局プロデューサー向井正也(椎名桔平さん)。
谷山女史の脚本の中に登場するシナリオライター志望の主婦、そしてその主婦が書いている作品中の脚本家という三層構造、言わば劇中劇中劇という構成になっています。
試みとしてはおもしろいものの、劇中劇自体が安っぽくおもしろくないので、なかなかにのれません。
劇中劇がしょぼいと谷山が才能あるシナリオライターに見えないのが、一番の問題ではないでしょうか。
このあたり匙加減が難しいとは思います。
誰もが駄作だと思わせながらも、その中のよさに向井だけが気づくということにしないといけないので。
でもそれがこの作品の生命線。
それができていない時点で、この作品も評価は定まってしまったと言えるでしょう。
谷山がほんとに才能が枯渇したワガママ女に見えるだけなので。

人は何故にものを書くのでしょう。
たぶんそれは自分というものを理解してもらいたいからなのではないでしょうか。
自分でブログを書いていても思います。
映画や本の感想を書いていますが、そこに書いているのは自分がどう感じたかで、そこには自分の日頃思っていること感じているということが入ります。
実はそういうことを伝えたいという気持ちの方が強いのではないかと。
作家さんにしても同じことではないかなと思います。
そもそも私小説なんていうのはその最たるものですよね。
小説家、シナリオライターなど作家さんは読んでみるとこの人らしいという作風があるものです(ない人もいますが)。
その作風というのは題材は違いこそすれ、その底辺に流れているテーマみたいなものは共通していることが多かったりします。
そのテーマはその作家さん自身の人生や生き方に根ざしたものであったりするのですよね。
僕はそういうその人の言いたいことが底辺に流れている作家さんの方が好きだったりします(ギラギラと出過ぎている人はそれはそれで好きではない)。
本作の谷山真由美はまさに自分の経験をベースに作品を生み出すタイプの作家です。
たぶんまだ彼女は作家として若いのですよね。
経験そのままではなくて、その経験をもっとエッセンス化した自分のコア、スタイルみたいなものが見つけられると、設定がいくら変わったとて自分らしい作品が書けるのではないでしょうか。
スタイルっていうのは外側の設定っていう意味ではなく、あくまでエッセンスなのです。
谷山が陥っているスランプは外側の設定だけをユニークにしようとあがいているところからきているのでしょう。
彼女らしさを自分自身で見つけられれば、自信をもって作品を書けるようになるのでしょう。
たぶんそれは自分だけでは見つけられるものではなくて、小説家なら編集者、シナリオライターならプロデューサー、なり自分以外で自分自身をわかってくれるパートナーと巡り会えた作家というのは幸せなのかもしれません。

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コメント

sakuraiさん、こんばんは!

あー、鴻上さんってそういう感じありますねー。
なんとなく恋愛を肥やしにしていくようなイメージが。
自己像投影かしらん。
フカキョンって男性ももちろんですが、女性からの支持が高い方な気がします。
気取らなくて、自分に素直そうなところが魅力なのかな。
本作の役はフカキョンにぴったりであったと思います。

投稿: はらやん(管理人) | 2010年11月28日 (日) 19時08分

自分が体験してきことがベースになってる、、、と自分で自分を縛ってしまっては、そこから広がっていくのは大変だろうなあ・・・と思いましたが、あれはコーカミさんのことなんだろうか。
フカキョンちゃんは、可愛いですよね。女性の目から見てもつくづく。彼女のおばちゃんになったときって、どんな感じだろう??と、ちょっと思ったりして。

投稿: sakurai | 2010年11月28日 (日) 14時39分

KLYさん、こんにちは!

ストーリーはどうにも評価しにくいですね。
確かに深キョンはあまりうまくはないのですけれど、他の女優さんにはない存在感があるというか。
不思議な女優さんですよね。

投稿: はらやん(管理人) | 2010年10月 3日 (日) 09時09分

まあ一言で言ってツマラン話でした。(爆)
でもいいです。深キョンが可愛かったですから。
ぶっちゃけ彼女観るための映像作品だとすら思ってます。^^;
いつまでたっても下手くそですが、それでも主演張れるこの
もって生まれた華やかさというかオーラ。数少ない女優さん
だなと思います。

投稿: KLY | 2010年10月 3日 (日) 01時18分

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