本 「トロイメライ」
こちらの作品は池上永一さんのヒット作「テンペスト」と同じ世界観を共有する物語です。
「テンペスト」のキャラクターもチラチラと登場してくるので、前作が好きな方はそのあたりはお楽しみということになるかと思います。
池上永一さんの作品はいくつも読んではいるのですが、いつもどうもいまいち自分としてはしっくりとこないところがあります。
それでも「テンペスト」は楽しんで読めたので、本作も期待をして手に取ったのですが、やはりどうも僕には合わないという感じがしてなりません。
今までも池上さんの作品のレビューでも何度か書いているのですが、やはりキャラクターが軽いというか、薄いというかそういう感じを受けます。
このあたりの食い足りなさが、僕があまりしっくりとこないというところなのかもしれません。
題材の選び方は、興味深いところを突いていると思うのですけれど。
本作は日本の時代で言うと江戸時代末くらいになって、主人公は本土で言うところの岡っ引きである筑作事の武太(むた)。
そのころの沖縄王朝は、中国の清と日本の薩摩藩の間で絶妙なバランスをとりながら生きながらえていました。
そのために法やルールも清そして薩摩の両方の顔色を窺いながら運用していかなければなりません(そのあたりは「テンペスト」で描かれている)。
そういう状況の中での、市井にいる岡っ引きの取り扱う事件とは、それはまた江戸の捕物帳とはまた違ったものになるような気がします。
けれども、実際読んでみると武太の役回りは狂言回しのような立場であり、また取り扱われる事件も捕物帳的なおもしろさはありません。
謎の人物も登場してきますが、その謎も回収されぬままに終わってしまう。
今後連作をしていくつもりなのかもしれませんが、これはちょっと厳しいかなと思いました。
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コメント
こにさん、こんにちは!
池上さんの登場人物は、けっこうキャラクター化されちゃっているんですよね。
記号化されているというか。
ですので、行動などもパターン化されているような気がします。
女性の描き方もそうなのかもしれませんね。
投稿: はらやん(管理人) | 2010年9月20日 (月) 14時40分
こんにちは
池上さんは、どこか違和感を持ちながらも「ぼくのキャノン」「風車祭」は面白く、沖縄の伝統や自然、琉球人の生き方など訴えかけてくるものがありました
しかし、テンペストで決定的、もう読まない、と決めました
女性性の描写がどうしても受け入れられませんでした
男性とは受け取り方が違うとは思うのですけどね
投稿: こに | 2010年9月20日 (月) 10時21分