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2010年9月28日 (火)

本 「ベイジン」

今、尖閣諸島の問題で日中の関係がぎくしゃくとしています。
日本人からすると、今回の中国の強引な対応にはとても違和感を感じます。
「そこがへんだよ、中国人」と言いたくもなります。
けれども中国人、というより中国という国の視点から見ればまったく正当だと思っているわけです。
そこにある異質感がありますが、彼の国とつき合っていくためには彼らに対して非常識だと叫んでもあまり効果があるわけではなく、彼らのメンタリティをわかった上で上手につき合うということが必要なわけです。

という中国の話題がタイムリーなときに、真山仁さんの「ベイジン」を読みました。
この作品は北京(ベイジン)オリンピック開催時に中国で世界最大の原発を作ろうとする日本人技師と、中国人共産党幹部の物語。
中国発展を全世界にアピールする場とオリンピックをとらえる中国政府、彼らはその技術レベルが世界を凌駕するということを誇示しようと世界最大の原発を建設し、その電力で”鳥の巣”を照らし出そうとするのです。
しかし、利権にまみれた受注、ずさんな工事、労働者のサボタージュなど幾度もその建設は壁にぶち当たります。
日本人が中国人に感じるであろう異質感をうまく表していると思います。
彼らは面子を重んじ、外面と内面が大きく異なります。
権力におもねるところも強い割りに、見えないところでは強かに生きる人々。
非常に個人主義的で利権志向が強い国民性。
個人主義ではありますが、それでも一度集団がある方向性を持つと、暴走的な力を発揮する性格もあります(最近の日系企業でのスト、尖閣諸島問題でのデモを見ればわかるように)。

ここでちょっと脱線を。
ちょうどオリンピック直前に僕は仕事で中国に行きました。
自分たちの会社の中国の工場の撮影をするために、日本からスタッフと機材とともに中国に渡ったのです。
もちろん機材や訪中の目的については中国大使館に申請済み。
それでも空港を出ようとしたら、通関で機材を渡してくれません。
どうもオリンピック直前だったということで、外国からのカメラが入っていることを警戒していたようです。
それでも事前に申請しているのだからと言ってもまったくとりあってくれません。
そのときの係官曰く、いつもカメラ機材の持ち込みは中国のどこでも禁止しているんだとの一本槍。
そんなわけはありません。
その一ヶ月前は別の空港で同じ装備で通関できたのですから。
日本の中国大使館やその省の役所まで言ってもまったくダメ。
結局機材は受け渡されませんでした(帰りに返してくれましたが)。
いろいろ手を使って中国で機材を手配し、撮影はなんとかできましたが・・・。
その後、そのとき一緒だった同僚が再び同じ空港で同じように通関した時は、まったく荷物検査などはなくスルーだったそうです。
手荷物を開くこともなかったそう。
そんときの係官は、オリンピックのときの係官と同人物だったとのこと。
同僚はなんちゅう国民だとあきれてました。

本作では日本人と中国人というまったく異質な価値観を持つ主人公二人が、異質感は異質感として持っていながらも、それを越えて信頼感で強く結ばれ、世界最大の原子力発電所の運開、そして未曾有の事故に立ち向かう姿を描いています。
国民性としてはとても違和感がある中国の人々ですが、個々人を見てみると当然のことながらいい人もいるわけです。
たぶん一括りに日本人とか、中国人とかラベルを貼ってしまうのではなく、彼らとつき合うには個人と個人の尊敬・信頼を持てる関係作りをしなくてはいけないのでしょうね。
会社で中国にしばらく滞在していた方に聞くと、実際、彼らと酒を酌み交わし信頼関係を築ければ非常に心強いということです。

冒頭に書いた事件で騒がしい今、本作を読むと、真山さんは非常に中国人というものをよく分析しているなあと感心してしまいました。

「ベイジン<上>」真山仁著 幻冬社 文庫 ISBN978-4-344-41468-6
「ベイジン<下>」真山仁著 幻冬社 文庫 ISBN978-4-344-41469-3

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