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2010年8月 7日 (土)

「仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ」 平成仮面ライダーで最高の出来映え

平成仮面ライダーの劇場版が作られるようになって10年が経ちましたが、その歴史の中で作られたいくつもの作品の中でも本作は最高の出来ではないでしょうか。
というより、「仮面ライダー」に限らず日本のヒーロー映画の中でも屈指の出来映えであると思います。
無論テレビシリーズの劇場版であるため、初見の方は設定がわからずに厳しいところはあると思いますが、これは子供たちが観ること前提の尺のため、いたしかたがないところでしょう。
しかしテレビシリーズを観てさえいれば、本作の中に溢れんばかりのサービス精神を感じることができると思います。
平成仮面ライダーの劇場版と言えば、かなりトリッキーな設定のものが多くみられました。
「龍騎」のテレビシリーズに先行しての最終回であったり、「響鬼」の時代劇であったり、「ディケイド」の昭和を含めてのオールライダー勢揃いであったり。
毎年よくこんなこと思いつくなと感心することしきりですが、これは奇手であるのは間違いありません。
その最たるものが「ディケイド」であったと思います。
奇手を打たざるを得なかったのは、劇場版と同時並行でテレビシリーズが放映されているためであるからです。
劇場版の内容がテレビシリーズに影響を与えてしまうと、テレビだけ観ている人は置き去りにされてしまいます(「電王」の劇場版はそれすら逆手にとりましたが)。
そのため奇手を打たざるを得なかったのです。
平成仮面ライダーを総括するための「ディケイド」が爆発的なお祭りを仕掛けた後の「仮面ライダーW」はいたってシンプルな構造にリセットしました(テレビシリーズについてのレビューは番組が終了してから行いたいと思います)。
「W」の劇場版は、パラレルワールドなどの設定ではなくテレビシリーズが描いている「風都」という架空の都市がある同じ世界です(劇場版で描かれる事件は風都タワーの壊れ具合から44話と45話の間に起こったと思われる)。
トリッキーな奇手ではなく、まっすぐに「仮面ライダーW」の世界観の中で劇場版は作られていました。
「仮面ライダーW」はヒーローがまっすぐにヒーローであるというところが気持ちがいいのです。
日本においてもアメリカにおいても、最近のヒーローはまっすぐではなくなってきました。
いわゆる悩めるヒーローであったり、ダークヒーローであったり。
これはマンガチックになりがちなヒーローを、人間として描きドラマを深くして、大人の目にも耐えうるようにしたという点で評価できます。
しかしこれは「大人しかわからない」ヒーローになってしまうという危険性もはらんでいます。
僕が子供の頃、ヒーローは「正義の味方」でした。
日本を、地球を、人々を守る「正義の味方」。
彼らはまっすぐに自分を犠牲にしても人々を守る。
その姿勢に子供の頃、やはり弱いものは助けなきゃというようなことを学んだような気がします。
しかし最近の悩めるヒーローは次第にイノセントに「正義の味方」であるということがなくなってきているような気もします。
これは改めてテレビシリーズのレビューでも触れたいと思いますが、本作において「仮面ライダー」という呼称は、「風都」の住民たちが自分たちを守ってくれるヒーローに対してつけたものです。
Wに変身する翔太郎もフィリップも、そして「アクセル」に変身する照井も「仮面ライダー」という名称に誇りを持っています。
彼らは人々の思い、願いを守るため、戦う。
彼ら「仮面ライダー」は「風都」の人々のために戦う「正義の味方」なのです。
このまっすぐに「正義の味方」でありたいという主人公たちの姿勢は、観ている子供たちにも届くのではないかなと思いました。
最後のクライマックスで翔太郎とフィリップが変身をする場面、バックにテレビシリーズの主題歌が流れるところなんぞは鳥肌ものっていうところを過ぎて、なんか感動して泣けてきそうになりました。
彼らがまっすぐに「正義の味方」でありたいという気持ちになんかぐっときたんですよね。

とは言いながら、子供向けの映画かというとさにあらず。
ヒーローものであるのですから、アクションシーンは見所ですが、これは今までのライダーアクションから一段レベルアップをしています。
監督は坂本浩一さんですが、彼は自らもアクションをする方で、アメリカに渡り「パワーレンジャー」(日本のスーパー戦隊シリーズを焼き直したもの)シリーズを監督していました。
そして最近では昨年末ウルトラシリーズの最新作「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」を監督したのが記憶に新しいところです。
坂本監督がアメリカで培ったワイヤーアクション、「ウルトラ銀河伝説」で取り入れたCGとのコラボ、そして盤石な高岩さんを始めとするJAEのスーツアクターの演技が、化学反応を起こして非常にスピード感が溢れ、迫力のあるアクションシーンになっていたと思います。
ヒートドーパントとWのバイクチェイスシーンなんかはすごくカッコよかったです。
しびれました。
アクションに関して言えば、アメリカの映画にも負けないんじゃないかと思えるくらいだと思いました。

三条陸さんの脚本も素晴らしいの一言。
子供向けであるために尺を短くしなくてはいけない中、物語としてはスピーディな展開でありつつも、ただ展開を追うだけではない、キャラクターの気持ちの描き込みもあって。
翔太郎とフィリップ、そして照井との間にある揺るぎがたい友情と信頼。
フィリップの記憶がない母への憧憬。
非常に高い構成力であったと思います(テレビシリーズもどの回も構成力は非常に高い)。
キメセリフの入れどころも三条さんはいいところに入れるんです。
「振り切るぜ」も「あたし聞いてなーい」もいいところで入れてくれます。
Wは「さあ、お前の罪を数えろ」はもちろんですが、それに対するエターナルの「数えきれねえなあ」は最高にイカしてました。
翔太郎の「切り札はいつも俺のところにくるのか」っていうのもカッコよかったです。
翔太郎が変身のに使うメモリ(Wの変身アイテム)が「ジョーカーメモリ」で「切り札」の記憶を持っているという設定ですが、なぜ「切り札」なのかがわかりました。
フィリップや照井(精神攻撃に耐性がある)とは異なり、翔太郎は特殊な能力はありません。
彼にあるのは「風都」の人々を守りたいという熱い思いと、そしてここぞというところでカードを切れる運を持っているのですよね。
その運、というか星回りこそが彼を「ジョーカー」たらしめているのだなと改めて思いました。
そうそう、翔太郎一人だけでの変身である仮面ライダージョーカーのときの必殺技「ライダーキック」「ライダーパンチ」は昭和世代的にはけっこうしびれました。
うーん、三条さん昭和世代のツボもわかってらっしゃる。

最後にゲストの俳優さんについて。
敵組織「NEVER」の一人羽原レイカ役の八代みなせさん、クール・ビューティという感じでいいですねー。
グラビアアイドルということですが、なんのなんのアクションとかキレキレでしたよ。
美しくてカッコいい。
「片腕マシンガール」の主演だったとか。
観ていないので観てみようかと思いました。
あと一番おいしいのは泉京水役の須藤元気さんでしょう。
泉はオカマちゃんなのですが、これが妙に須藤さんが楽しんでやっていて。
変身後にあててる声でもむちゃくちゃ須藤さんがオカマちゃんな感じをだしていてなんか良かったです。
目覚めちゃった感じかな(笑)。

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コメント

メビウスさん、こんばんは!

2回目行ってきてしまいました・・・。
坂本監督は去年のウルトラマンでもスピーディなアクションを演出していましたし、テレビの担当回も出来が良いのが多かったので、個人的には期待度高かったのですが、想像以上によかったです。
坂本監督は10年前くらいはアメリカで田崎監督と「パワーレンジャー」をいっしょに監督していたんですよね。
2回目のとき「俺に質問するな」場所確認しました.
確かにカッコいいところで言ってくれますよね。
1回目で気づかなかったのですけれど、クイーン&エリザベスが探してきたメモリって、「アクセル」と「キー」と「バード」で「AKB」だったんですねー。
遊んでるなー(笑)。

投稿: はらやん(管理人) | 2010年8月13日 (金) 16時14分

はらやんさんこんばんわ♪

去年のディケイド劇場版も凄い面白かったですけど、本作のダブル劇場版もあのオールライダーに引けを取らないくらい良かったですよねぇ。久々に隙の無い劇場版を観た気がして自分もかなり満足できました♪
今回の監督は田崎さんじゃなかったので最初こそどんなもんかな?とも思ったんですけども、内容も演出も秀逸に見えましたし、とりわけドーパントバトルやライダーバトルといったアクション面は3Dも相まってホント迫力満点。仮面ライダージョーカー時の正統派ライダーキックにも思わず心の中で『出たっ!』と唸ってしまったほどです。それに翔太郎たちの名ゼリフも場面毎に上手く活用されていましたねぇ。個人的には照井の『俺に質問するな!』を言うくだりが非常に気に入って思わずニンマリしてしまいました^^(笑

そうそう、ゲスト俳優さんの元気さんに関しては松岡さんを食っちゃってたんじゃないでしょうか?それくらいインパクトあるキャラクターだったと自分も思いますねぇ。オネエキャラが予想以上にハマッてて全然違和感感じなかったのも面白かったかなとっ♪

もしかしたら自分、本作を今年の鑑賞映画のベスト10本に加えるかもしれませんw

投稿: メビウス | 2010年8月10日 (火) 22時17分

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