本 「キャラクターとは何か」
日本発のアニメやマンガが海外で評価されていることを受け、「キャラクター論」についての本を多く見かけるようになりました。
ただし本著の冒頭で指摘しているように、それは文化的な側面からのアプローチか、またはビジネス的なアプローチのみでしか語られてきていませんでした。
本著はその双方のアプローチを試みているという点で新しいと思いました。
タイトルにあるように「キャラクター」というものは結局のところなんなのか。
僕もこのブログで「キャラクター」という言葉を多く使いますが、実のところその定義とは何かとはあまり深く考えず、曖昧に使っていたというのが正直なところです。
著者の整理によると、キャラクターは「意味」「内面」「図像」で構成されてます。
これはシンプルでありながら、的確な指摘で、僕個人としてはなるほどと納得した次第です。
まず「意味」というのはそのキャラクターが象徴している概念と言っていいでしょう。
本著ではアメリカの象徴であるアンクル・サムをあげていますが、企業などのマスコットキャラクターというのもそういう意味合いがあるかもしれません。
「内面」というのはそのキャラクターの持つ性格ですね。
そして「図像」はその外見です。
「意味」「内面」「図像」がそろっていなくてもキャラクターは成立しますが、そのキャラクターが浸透するにつれ他の要素も充実していきます。
また本著では冒頭にあげた文化的側面、ビジネス的側面からキャラクターを分析しています。
中でもアメリカ的な考え方、日本的な考え方についての分析はなるほどと思いました。
僕は仕事柄、著作権などについてもケアしなくてはいけないので、普通の方よりは多少詳しいですが、これはけっこうナーバスな問題を持っています。
以前仕事でディズニーさんとお仕事をしましたが、ここはかなり厳格なルールを持っています。
ただしそのルールは非常に洗練されているので、いっしょに仕事をする際、そのルールをしっかりと理解していればとてもやりやすいビジネスパートナーでした。
彼らは地方のちっちゃい看板などに彼らのキャラクターが無断で使われるのを発見した場合でも、きちんと抗議をすると聞いています。
それだけの管理をするからこそディズニーのキャラクターワールドがしっかりと守られているのだと思います。
その点、日本のキャラクターについていうと、やや属人的なところが多いというのが印象です。
先方と通じ合ってしまえればけっこう融通はききますが、逆に心象を損ねるとなかなかうまくいかない。
ルールはありますが、けっこう運用で解釈されるためある意味案件ごとの調整が必要になります。
シンプルにルールを守っていれば問題ないというディズニーさんのスタイルとは異なる印象があります。
ただ日本的な曖昧さというのが、日本のキャラクターがこのように隆盛している要因とも言えます。
本著でも触れている同人誌、またガレージキットなどの二次創作については、アメリカでは絶対NG
でしょう。
しかしながら日本においてはこの二次創作分野についてはある程度ファン活動的な意味合いで黙認されてきたというのが実情です。
キャラクター権者にとっては口コミで宣伝してくれているという効果を、そして出版社などについてはそこで活動している人が新たなるクリエイターの卵と見えるわけです。
つまりは二次創作分野は著作権的にはグレーゾーンでありながらも、ファン的にも、キャラクタービジネスを行う企業にとっても都合のいい場所であり、そのために日本のキャラクターが発展してきたと言えるわけです。
このあたりの著者の分析は、目のつけどころが非常によく、日本のキャラクタービジネスの発展の構造を上手に解き明かしていると思います。
久しぶりに勉強になった!と思える本でありました。
「キャラクターとは何か」小田切博著 筑摩書房 新書 ISBN978-4-480-06531-5
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