本 「<中東>の考え方」
ニュースで「中東」という言葉はよく聞きます。
また最近、映画の中でも「中東」が舞台になるものも多くなってきています。
そして9.11以降、「中東」=「テロ」みたいなイメージも多くもたれるようになっています。
じゃ、「中東」って何なの?と言われると実ははっきりと「こうだ」と答えられる人は実は多くはないのではないでしょうか。
本著はなんとなくみんなが持っている「中東」というエリアを、その歴史的背景、国際社会との関係性の中から明確に浮かび上がらせてくれるところが、「中東」理解のガイドとなってくれる良本だと思いました。
こういうテーマの本は読みにくいと思われる方は多いと思いますが、普通の人でも十分読みやすい本になっていると思います。
著者の方は映画が好きな方なのか、ところどころ「中東」を舞台にした映画の話も出てきます。
例えば、今年公開された「ハート・ロッカー」についても触れらているところがありました。
(以下引用)
あくまで主人公は、「違う宗教と違う文化、考え方を持った、理解不能な人々」に囲まれて、途方にくれる米兵である。イラクという場所、そこに住む人々は、ただの背景でしかない。最初から、同じ立場の、理解しあうことのできる相手としては、扱われていない。
著者がモヤモヤするのは、このようなところである。最初から後景に追いやってしまって、「わかる」もへったくれもないじゃないか、と思う。これこそ、わかろうとする努力の法規の最たるものではないか?文化が違うから、信仰が違うからと言う以前にまず、戦争と占領に振り回された人々の立場に目をつむっては、わかるものもわからない。
イラクで起きていることは、イラクの人たちを主人公に描かない限り、理解できないのではないのだろうか。中東が「わかりにくい」と思われてしまう原因は、中東で生きる人々を主人公として考えないことにある。
(引用終わり)
ちょっと長い引用でしたが、確かにそのとおりだなと思いました。
外側からみただけではそこのエリアの特性を理解できないのはその通りです。
僕たち日本人も、今になっても映画など海外からは「トンデモ日本」のイメージで観られることに辟易していると同じことかもしれません。
いまの「中東」を理解するには、今の状況だけを見てみても理解できません。
本著は「中東」とヨーロッパがかかわり合うようになった時代から、その変遷を追うことにより、どのように現在の「中東」になっていくかというのを解説します。
また「中東」と一括りにされやすいこの地域は、イランやイラク、サウジなどいろいろな国や地域があるわけで、その各エリアの特性の違いを丁寧に書いています。
またさきほどの引用にあるように、政治的背景だけではなく、そのエリアに住む人々の姿、つまりは「中東」の実際の主人公である一般の人々の意識についても触れています。
そこに暮らす人々は当然のことながら、全員がテロリストであるわけもなく、彼らの暮らす日常に触れるころにより、彼らへの理解に繋がるような気がしました。
イラン出身の女性作家原作を原作にした「ペルセポリス」についても本著の中で触れていますが、あの作品で描かれているような市井の人々の意識の理解が、現在このエリアがかかえる問題の解決に繋がるのではないかと思います。
「中東」にちょっと興味があるけれど、どこから手をつけていいかわからないという方には向いている本だと思います。
「<中東>の考え方」酒井啓子著 講談社 新書 ISBN978-4-06-288053-4
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