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2010年7月19日 (月)

「私の優しくない先輩」 思いのほか深かったりする

カルピスウォーターなどCMでもよくみかける川島海荷ちゃん。
実は出演作はたぶんほとんど観てなくて、彼女の作品は初めての観賞になります。
何故観に行ったかというというと、けっこう予告がおもしろかったんですよね。
かわいらしい海荷ちゃんと、顔にインパクトのあるはんにゃの金田哲さん(お笑いまったく疎いのですがコントの方なのですね)の止め画でのやり取りがなんかおもしろくて。
アニメっぽいなあと思ったら、監督はアニメ畑の方で、初実写作品とのことです。
なるほど。

川島海荷ちゃんが演じるのが西表耶麻子という女子高校生。
彼女は幼い頃から心臓に病を抱えていて、ずっとぼんやりと自分は長くは生きられないのかなーと思いながら生きてきた女の子です。
そういう耶麻子を「ヤマネコ!」(名字が西表じゃそりゃ呼びたくなるわな)と呼ぶ、不破先輩を演じるのが金田さんになります。
この不破先輩は、耶麻子が劇中で「クサい!ウザい!キモい!」と毛嫌いするように、なんというかムチャクチャ暑苦しいキャラなのですよね。
彼は80年代の青春ドラマからやってきたような熱血男。
あの時代に生きてたら熱い男と褒められていたかもしれないけれど、今の時代ではウザいだけ。
これを金田さんがすごいはっちゃけて演じているので、すごくいい。
この先輩に振り回される耶麻子のドタバタラブコメディかと思ったら、実は思いのほか深かったりするお話でした(とはいえラブコメとしてみても全然問題なし)。
耶麻子は心臓病を患っているので、彼女は若いうちに死ぬかもとずっと思ってきました。
だから彼女は生きることへの執着がそれほどないのですよね。
劇中でも彼女のモノローグにあるように、自分が今この地球にいるのはほんの一瞬の間で、すぐに好きなものとも別れなくてはいけないと思っています。
だから彼女は短い生なのだから、きれいなもの、幸せなものしか見たくないって気持ちがあって、現実のイヤなとこ、嫌いなことから避けて夢見がちな空想癖のある子となっています。
そういう耶麻子にとって熱く生きることや努力することを語る不破先輩はウザいだけじゃなくって、自分の生き方、感じ方を否定されるような気がして苦手だったんでしょうね。
彼女からしたらがんばったってすぐ死んでしまうのだもの、という感じなのでしょう。
現実っていうのはきれいなもの、幸せなものだけがあるのではなく、汚いものや不幸せなこともたくさんあります。
それは自分以外のこともそうですが、自分の心にもきれいな心と汚い心があるのですよね。
耶麻子は南先輩が好きっていう自分の中にあるきれいな心をずっと感じていたいのですが、それに伴って生じてくる友達へのヤキモチや意地悪などという自分のイヤなところを感じつつもそれから目をそらそうとします。
彼女は自分が暮らす小さな島が心地よい場所と最初のころ言っていますが、自分の心の中にある暗い部分に気づいたとき、その心地よい場所もとても気持ち悪い場所に感じてしまいます。
このあたりの耶麻子の気持ちはテレビシリーズ(新劇場版のほうじゃなくて)の「エヴァンゲリオン」のシンジやアスカにも通じるところがあるかなと思いました。
「気持ち悪い・・・」ってやつです。
人とふれあいたいという気持ちはあるけれど、そうすることにより見たくない汚いものまで見えてきてしまう。
汚いものは見たくないから、人とはふれあいたくない。
そういう何か世界と接触点をもちづらい10代特有の潔癖性みたいなものがでていたと思います。
耶麻子が不破先輩に「クサい!ウザい!キモい!」って言うのに対し、「おう、生きてるんだからクセーよ!」と切り返せる先輩はある意味すごい。
昔より今の時代は人や世界との接点が非常に狭くなってきています。
それこそ「エヴァンゲリオン」じゃないですが、「ヤマアラシのジレンマ」で接点が広くなることによって得られることより、傷つく方を気にしてしまうというか。
その割に他人が自分のことを見る目をとても気にしてしまったりもしています。
脱線しますが、通販のニキビケアのCMで男の子が「最近きれいになったって言われて嬉しい」って言っていたのを見て非常に驚きました。
最近は男の子でも一目を気にしてニキビケアするのね。
そこまで人目を気にするんだ・・・。
脱線から戻して。
生きていくということはきれいなものも感じて、汚いものも感じて、それをひっくるめて生きているっていうことなんですよね。
それは世界に対しても自分自身に対しても。
「どこからがリアルなんですか」と耶麻子が不破先輩に問いますが、彼は
「お前の感じることが全部リアルだ」と答えます。
ああ見えて、不破先輩けっこう哲学的です。

タイトルロールは川島海荷ちゃんによる「MajiでKoiする5秒前」がかかります。
30代、40代の方は反応しちゃうかと思いますが、こちらの曲は広末涼子さんがアイドル時代に歌っていた曲のカバーですね。
80〜90年代のアイドルPVのような作りで、ちょいと懐かしい気分になっちゃいました。

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