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2010年5月 3日 (月)

本 「アマゾニア」

読み応えのある作品でした。
手に取るまで知らなかったのですが、作者の粕谷知世さんは日本ファンタジーノベル大賞受賞された方ということ。
日本ファンタジーノベル大賞出身の作家さんは好きな方が多いので、期待して読みました。

舞台となるのは、タイトルにあるようにアマゾニア、つまりはアマゾン川流域です。
時代はスペイン人が南米に進出した後、そして登場するのはアマゾニアに住む先住者です。
なかでもアマゾン川の語源ともなったアマゾネス=女人族が物語の中心となります。
アマゾン川流域は今でも地球の酸素のおよそ1/3を供給している地域です。
それだけ植物も豊かであり、また生物の多様性も誇ります。
人間から見れば危険はあれども、そこは一つの生態系として非常に豊かであるのです。
この作品に登場するアマゾニアの人々は、人間たちもその生態系の一つとして認識しており、自然に対して敬意を持って暮らしています。
我々とは違いますが、彼らのルールに従い生き、それは森全体として人間を含めた共同体として秩序を保っていました。
しかし、その秩序を壊す者が訪れます。
一つは南米に進出してきたスペイン人です。
彼らは征服することにより拡大してきました。
ヨーロッパも元々は深い森でした。
しかし人々はそれを開墾し、豊かな生活を得てきました。
けれどもそれにより、人は自然の一部としての立場ではなく、自然に対する立場となってしまったのです。
そしてアマゾニアを訪れたスペイン人の一人ケネス。
彼はアマゾニアの"泉の民"から信仰の対象となっていた"森の娘"から想い人と言われます。
"森の娘"は"泉の民"たちの共同体をずっと危険から守ってきた精霊のような存在です。
その"森の娘"が共同体よりも、自分の想いを優先して行動し始めたのです。
それは共同体を揺るがすこととなりました。
この二つの秩序の破壊は、生態系や共同体を、人間や個人の欲望や想いが凌駕していくということによって起こります。
これはまさに現代でも起こっていることであり、その寓意としてこの物語は読めます。
現代からいまさら原始の共同体のような生活には戻りようもありません。
けれども個の欲望の達成だけを思うのではなく、共同体の一部であるという認識も持たなくてはいけないのだと思いました。

「アマゾニア」粕谷知世著 中央公論 ハードカバー ISBN978-4-12-003578-6

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