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2010年4月24日 (土)

本 「エデン」

非常におもしろかった近藤史恵さんの「サクリファイス」の続編です。
前作はスポーツ小説と、青春小説と、ミステリー小説がいいバランスでとられていた良作でした。
本作は自転車レースの本場であるヨーロッパ、それもグラン・ツールを舞台としています。
前作の良いところを継承しようとする意識が強かったのか、やや前作ほどの感動がなかったような気がしました。
舞台は大きくなっていますが、作品としてのスケールはこじんまりしてしまったように感じました。
たぶん大きな要素としては、主人公、誓の成長という視点が前作に比べて薄かったからだと思います。
スポーツ小説としての自転車レースの駆け引き、ミステリー的要素も前作のようにあります。
ただ青春小説としての要素が弱くなっているのです。
これは仕方がないことでもあります。
前作で誓は事件をきっかけに自分の生き方をみつけました。
そういう意味では誓は一人の大人として成長したわけで、本作では前作のようなあがくような成長というのは描きようがありません。
その分の要素を、ニコラという新しい登場人物に背負わせようとしているのだと思いますが、本作は一人称の作品であるため、前作ほどの感情移入をさせられるにいたりません。
このあたりは仕方がないところなのかもしれません。
本作を読んで、改めて前作「サクリファイス」のバランスの良さを再認識しました。

前作「サクリファイス」の記事はこちら→
第3作「サヴァイヴ」の記事はこちら→

「エデン」近藤史恵著 新潮社 ハードカバー ISBN978-4-10-305252-4

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受信: 2010年5月11日 (火) 12時43分

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「サクリファイス」の続編。 [続きを読む]

受信: 2010年12月 6日 (月) 12時53分

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受信: 2010年12月 9日 (木) 06時49分

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エデンクチコミを見る 「サクリファイス」がよかったので、その続編ということで迷わず読みました。 舞台となったツール・ド・フランスで展開されるレースの描写もおもしろかっ ... [続きを読む]

受信: 2010年12月 9日 (木) 20時28分

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受信: 2010年12月24日 (金) 21時50分

» 「エデン」 近藤 史恵 [日々の書付]
本読み達を魅了した自転車ロードレース小説「サクリファイス」。その待ちに待った続編「エデン」が発売されました。( ̄▽ ̄) 相変わらず自転車レースの知識は皆無に近い私ですが、読んでいくうちにどんどんツール・ド・フランスの世界へ引き込まれて行きました。 物語は前作の事件から3年後、スペインのチームからフランスのパート・ピカルディに移った白石誓(チカ)はロードレースの最高峰・ツール・ド・フランスへ出場することになったが、その直前、スポンサーの撤退によりチーム存続の危機を知らされる。 そんな中、パー... [続きを読む]

受信: 2010年12月27日 (月) 19時55分

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