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2010年4月14日 (水)

本 「心とろかすような」

宮部みゆきさんのデビュー作「パーフェクト・ブルー」で登場した元警察犬マサが語るミステリーの続編になります。
短編集になりますが、宮部みゆきさんの作品は長編であっても短編の積み重ねで構成されているものも多く、この方はこういう短中編も上手な方だなと改めて認識します。
この短編集に収められている作品はもう20年くらい前のものが多くまだ若いときの宮部さんの作品なのですが、それでもどれもおもしろく、デビューしたての頃から才能があふれる方なのだなと思います。
また宮部さんの作品によく登場する、他人に対し人として思いやる気持ちのない人(特に若者に多い)という登場人物もすでに登場します。
基本的に宮部さんの作品というのはこのような人と善良な人々を対比的に描くことが多く、本作の作品もそのようなかたちのものが多いです。
初期より宮部さんには書きたいものがあり、ある種の型がもうできていたのでしょうね。
マサは人間の言葉を理解することはできるが、それを人間には伝えられない(言葉を話せないので)という制約というのはなかなかにおもしろいと思います。
いわゆる神の視点と、探偵一人称のちょうど間といったところかもしれません。
元警察犬マサの一人称という特殊な視点は読んでいても新鮮ですので、また続編を読みたい気にもなります。

「心とろかすような」宮部みゆき著 東京創元社 文庫 ISBN4-488-41102-9

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コメント

SOARさん、こんにちは!

マサのシリーズ、ほんわかとしていていいですよね。
初期の作品はこういう雰囲気のものが宮部さんは多いです。
加代ちゃんって他の作品にでてましたっけ?
教えてくださーい。

投稿: はらやん(管理人) | 2010年4月16日 (金) 05時58分

宮部みゆきの作品って考えてみると一人称があまりないですよね~。
そんな中で珍しい一人称視点作品がまさかの犬!
いやあマサシリーズ、大好きです。

加代ちゃん糸ちゃんへの優しさあふれる老犬の語り口がいいですね。

そうそう、マサシリーズとは関係ない宮部作品で、加代ちゃんがちらりと登場する長編があるのをはらやんさんはご存知でしたっけ?(念のため内緒にしときます)

投稿: SOAR | 2010年4月14日 (水) 21時35分

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