本 「ブラックペアン1988」
桜宮サーガとも呼ばれる一連の海堂尊さんの作品群の中で物語の時代の中では古い時代になる作品となります(最も古い時代を扱っているのは「ひかりの剣」)。
「田口・白鳥」シリーズでは狸親父っぷりを発揮している高階院長の若かりし頃が描かれています。
高階院長の若かりし時代については先にあげた「ひかりの剣」でも描かれていますが、彼が手練手管に富んだやり手になっていくというきっかけというのは本作で描かれた佐伯教授との出会いが大きかったのであろうと思われます。
「田口・白鳥」シリーズでは高階院長はすべてを見通しながらも、飄々としているイメージがあり、決して熱い男として描かれているわけではありません。
けれども本作の高階は才気あふれる若手として描かれ、少なからず自分の才への自信を感じている男として描かれています。
けれど本作で描かれる事件を通し、彼は医療というものの奥深さを痛感したように感じます。
それゆえに彼は「田口・白鳥」シリーズに描かれている男になっていったのでしょう。
確実に彼は、佐伯教授の意志を継いでいると言えます。
ある意味、桜宮サーガというのは高階という男の人生を描いているシリーズとも言えるかもしれません。
高階院長以外にも桜宮サーガに登場する、キャラクターが随所い顔を出します。
「チーム・バチスタの栄光」の田口が手術嫌いになったわけも描かれますし、「ジェネラル・ルージュの凱旋」の速水も才気あふれる若者として登場します。
ラストのブラックペアンの謎が解き明かされる場面は、初期の「チーム・バチスタの栄光」を彷佛させる緊迫感があり、ページを繰る手が早まりました。
このあたりの見せ方というのは海堂さんはやはり上手ですね。
本著の続きとなる「ブレイズメス1990」の記事はこちら→
海堂尊作品「ひかりの剣」の記事はこちら→
海堂尊作品「チーム・バチスタの栄光」の記事はこちら→
海堂尊作品「ジェネラル・ルージュの凱旋」の記事はこちら→
「ブラックペアン1988<上>」海堂尊著 講談社 文庫 ISBN978-4-06-276525-1
「ブラックペアン1988<下>」海堂尊著 講談社 文庫 ISBN978-4-06-276526-8
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» 海堂尊『ブラックペアン1988』上・下 [日々のつぶやき]
「時はバチスタ事件が起こる20年前、東城大学付属病院研修医の世良は佐伯外科に入局した。
彼のオーベンとなったのは帝華大学からきた講師の高階、彼の型破りなやり方に周りから色々な雑音が。
そして一番高階のやり方に反論する渡海にも世良は引き込まれていく・・・... [続きを読む]
受信: 2010年4月16日 (金) 16時57分
» 『ブラックペアン1988』 海堂尊 [【徒然なるままに・・・】]
「外科研修医世良が飛び込んだのは 君臨する”神の手”教授に新兵器導入の講師、技術偏重の医局員ら、策謀渦巻く大学病院・・・・・・
大出血の手術現場で世良が見た 医師たちの壮絶で高貴な覚悟。」
うーん、相変わらず濃ゆいキャラクターたちが、凄まじい物語を展開してくれています。
これ、『チーム・バチスタの栄光』に始まる一連のシリーズ物の一冊で、時代はタイトル通り1988年(昭和63年)、舞台は勿論東城大学医学部付属病院。
既に”ミステリー”の冠が取れた”メディカル・エンターテインメント”の、通算... [続きを読む]
受信: 2010年4月17日 (土) 10時04分
» 【本】ブラックぺアン1988 [★YUKAの気ままな有閑日記★]
『ブラックぺアン1988』 海堂尊 講談社【comment】本作は、1988年の東城大学医学部付属病院が舞台となっている。つまり、『チーム・バチスタ〜』から始まった『田口&白鳥シリーズ』の約20年前を描いたものだ。これは、シリーズの番外編としてすこぶる楽しめる作品であり、今までの海堂氏の作品を全て読んだ方こそ押されるツボも多いだろう。勿論本作だけでも面白いとは思うが、出来ればせめて『チーム・バチスタ〜』を読んでから手にするのが望ましい。筆者が、親切且つ巧妙に、または... [続きを読む]
受信: 2010年4月17日 (土) 16時41分
» ブラックペアン1988 [Yuhiの読書日記+α]
海堂尊著「ブラックペアン1988」を読了しました!
この小説は、「チーム・バチスタの栄光」から始まる田口&白鳥シリーズの番外編にあたる作品で、「バチスタ」の時代から約20年前の事件を描いています。
番外編という事だし(ましてや20年も前の話だし)、少々不安に思いながら読み進めていったのですが、これがすご〜く面白かった!!
海堂さん、どんどん上達していってるんじゃないですか〜{/eq_2/}
まず良かったのは、主人公が若いこと。「チーム・バチスタ〜」等のシリーズ本編では、主だった登場人物は皆、成... [続きを読む]
受信: 2010年4月18日 (日) 00時34分
» 『ブラックペアン1988』 [みゆみゆの徒然日記]
海堂尊/著
『ジェネラル・ルージュの凱旋』を読んで、『螺鈿迷宮』を読もうと思い、書店に行ったら売り切れだったのでこちらを先に読みました。(割と大きいところなのに・・・ちなみに『ジェネラル〜』も売り切れだった。)
バチスタスキャンダルが起こる20年前の昭和63年の東城医大が舞台。 このお話は今までの物語とは違いミステリーではないですが、楽しめました。何せペアンって何?ああ、この表紙のやつ?っていうくらいの全くの度素人かつ血が苦手なんで、手術描写はちょっと想像し辛かったですが(苦笑)、それでも... [続きを読む]
受信: 2010年4月18日 (日) 09時16分
» ブラックペアン1988 著者:海堂尊 [黒猫のうたた寝]
ちょっとした海堂尊まつりが続いてます(笑)若かりし頃の高階院長と東城大学医学部との因縁のはじまりは・・・そういうことだったわけね。研修医世良は、東城大学の外科に配属された。1日目・・・世良は、食道癌手術の権威であり外科教室の神のような佐伯教授に、目をつけら... [続きを読む]
受信: 2010年4月20日 (火) 09時27分
» 『ブラック・ペアン 1988』 (著)海堂尊 [たいむのひとりごと]
”日本武尊”といえば「ヤマトタケルノミコト」と読むのは一般常識だが、”海堂尊”を「カイドウ、ソン?」なんて、見事に”タケル”と読めなかった自分が情けない。やっぱり地名と名前は難しい(と自己弁護)『ブラ... [続きを読む]
受信: 2010年4月21日 (水) 22時46分
» ブラックペアン1988 [勝手に書評]
タイトル : ブラックペアン1988
著者 : 海堂尊
出版社 : 講談社
出版年: 2007年
---感想---
「チーム・バチスタの栄光」の海堂尊の作品。「チーム・バチスタの栄光」の舞台となった東城大学医学部付属病院なのですが、時代が遡っていて、1988年。約20年前の設定になっています。若い頃の高階院長、藤原看護師、垣谷講師、黒崎教授、田口医師などが登場する上、田口医師が外科を諦めたきっかけとなった出来事が描写されています。
中々、面白く描かれています。あんまり書くとネタバレになってしまいま... [続きを読む]
受信: 2010年5月16日 (日) 21時28分
» 海堂尊 『ブラックペアン1988』 [映画な日々。読書な日々。]
ブラックペアン1988/海堂 尊
¥1,680
Amazon.co.jp
外科研修医世良が飛び込んだのは君臨する“神の手”教授に新兵器導入の講師、技術偏重の医局員ら、策謀渦巻く大学病院…大出血の手術現場で世良が見た医師たちの凄絶で高貴な覚悟。
期待通り、とても面白かった... [続きを読む]
受信: 2010年6月 7日 (月) 16時09分
» 海堂尊「ひかりの剣」 [ご本といえばblog]
海堂尊著 「ひかりの剣」を読む。
このフレーズにシビれた。
即答できないか。それが君の限界だ。速水君は今、そこまでして勝つことに意味があるのか、と思っただろう。その答えを教えてあげよう。そのとおり、意味はある。あるいはこう言った方がわかるかな。そこまでして...... [続きを読む]
受信: 2010年9月27日 (月) 10時09分
» 海堂尊「ブラックペアン1988」 [ご本といえばblog]
海堂尊著 「ブラックペアン1988」を読む。
このフレーズにシビれた。
世良は慎重に手洗いを続ける。手のひらのうらおもて。手首。二の腕。指の一本一本。前腕。すべてを六角柱に見立て、その一面を十回ずつ。先端から中心へ。流れを乱さず、すべては同じルールの下に。
[....... [続きを読む]
受信: 2010年10月16日 (土) 08時29分
» 海堂尊「ブラックペアン1988」 [りゅうちゃんミストラル]
海堂尊「ブラックペアン1988」を読んだ。(この記事はネタばれあり) 「チーム・バチスタの栄光」に始まる医療現場のシリーズ。バチスタ以前に東城大学医学部付属病院... [続きを読む]
受信: 2010年10月16日 (土) 16時36分
» ブラックペアン1988 / 海堂尊 [ねこやま]
抜粋
驚愕手術の結末!
外科研修医世良が飛び込んだのは君臨する“神の手”
教授に新兵器導入の講師、技術偏重の医局員ら、
策謀渦巻く大学病院……
大出血の手術現場で世良が見た医師たちの凄絶で高貴な覚悟。
『チーム・バチスタの栄光』で颯爽とベストセラーデビュ...... [続きを読む]
受信: 2011年5月 3日 (火) 18時26分
コメント
たいむさん、こんばんは!
こちらの作品を一番最初に読むと高階院長のイメージは大きく違いますよねー。
僕は「バチスタ」からだったので「古狸」イメージが強くて、若かったときはけっこう血気盛んだったんだなあと思いました。
いろいろ経験して百戦錬磨な古狸になったのでしょうね。
ココログもいろいろ新機能をつけてきてますが、全然使い切れていないんですよ〜。
投稿: はらやん(管理人) | 2010年4月22日 (木) 22時28分
こんにちは!
TBが埋もれてまして、遅くなりました。
私はバチスタではなく、この本を一番最初に読んだんですよー。
だから、高階はもっとカッコ良い印象を思っていたのだけど、
バチスタでは映画もTVもおっさんでねー(^^;
でも、後のキーマンたちがたくさん登場して、嬉しくなる本ですよねw
この作品までは一般大衆向けな作品として勢いがあったけれど
イノセント・・・などはもうマイワールドに走り始めた海堂さんという印象です。
ところで、テンプレがすっきりしましたねー。
リッチテンプレもいじれるとかなんとか。
でもいじれないのもあるとかないとか。
もう少し分かりやすいと良いのだけど。
投稿: たいむ(管理人) | 2010年4月21日 (水) 22時44分