本 「ソウルケイジ」
好評だった「ストロベリーナイト」の姫川玲子刑事シリーズの第二弾です。
前作はかなり陰惨で生々しい事件が題材ではありましたが、本作はどちらかといえばしっとりとした情感がある作品になっています。
「ストロベリーナイト」は人間性が欠落したことによる事件でしたが、本作の事件は人の善意、人間性ゆえに引き起こされる事件となっています。
出だしの少年の一人称は「ストロベリーナイト」の冒頭を彷彿させるところがあり、またこの少年が悪意にさらされ歪んだ犯罪に向かっていってしまうのではないかという悪い予感を持ちます。
けれどもこの少年は、父親代わりとなる男に愛情を注がれ真っすぐに育ちます。
前作は人の悪意に端を発する犯罪と言えましょうが、本作は人の善意がきっかけになるというところは対称的であると言っていいかもしれません。
ですから派手さという意味では前作に及ばないところがありますが、なにか哀しい、しかし暖かい気持ちにもなれる情感があるように思えます。
そういう点で姫川シリーズというのは懐が深い作品群であると言えると思います。
前作も本作も少年少女が事件に関わります。
けれどもそれは彼らたちに真の原因があるわけではなく、周りの大人たちがそのきっかけを作っているように見えます。
少年犯罪が増えてきていて問題となっていますが、けれどもそれは大人たちがしっかりとした範を若者に見せられていないからかもしれません。
姫川玲子シリーズ「ストロベリーナイト」の記事はこちら→
姫川玲子シリーズ「シンメトリー」の記事はこちら→
「ソウルケイジ」誉田哲也著 光文社 文庫 ISBN978-4-334-74668-1
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