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2010年2月21日 (日)

本 「ボーン・コレクター」

デンゼル・ワシントン、アンジェリーナ・ジョリーで映画化もされた作品です(映画の方は未見ですけれど)。
いわゆるサイコキラーが出てくる猟奇殺人事件が題材になりますが、これがなかなかにおもしろい。
主人公ライムは元NY市警の科学捜査の専門家ですが、事件捜査中の事故により首から上しか動かせない重度の障害を持つ身となり、一線を退きます。
まさに身を動かせないロックアウト症候群の一歩手前(かろうじてしゃべれるので、毒舌は激しい)という状況のため、ライムは自殺すら望みます。
けれどもNYで猟奇殺人事件が発生し、その科学捜査の知見を買われ捜査に加わります。
ライムは文字通り自分は動かずに証拠により捜査をするアームチェア・ディテクティブそのものです。
その推理は心理学的というよりも、物理的証拠とデータベースによる緻密な積み上げ型の捜査で、海外ドラマの「C:S:I」シリーズや「BONES」の元ネタとも思えるような感じがあります。
そのライムの手足となって捜査を行うのが、アメリアという女性巡査。
彼女は行動的であり、頭もよくライムの鑑識に関する知識を吸収し、現場を捜索します。
ライムは壮年男性であり、アメリアは若く美しい女性。
ライムもアメリアも互いに魅かれ合いますが、それが男女としてか、師弟としてか、友情としてかの微妙な感じの関係性が物語に適度なテンションと、和やかさを持たせてくれます。
ライムは半身不随なので絶対に男女の関係にはならないわけですので、このあたりのプラトニック(にならざるを得ない)なところがいいです。
事件の捜査と、アメリアという存在により、ライムが生きることに希望を持っていく展開もいいです。
こういうミステリーはバディものが多く、ホームズ&ワトソンに限らず魅力的な作品がありますが、本作のライム&アメリアも非常に見事なコンビだと思います。
なので映画のアンジェリーナ・ジョリーはイメージがぴったりなのですが、ライムのデンゼル・ワシントンは少々若い感じがします。
モーガン・フリーマンくらいで丁度いいかなあ。
ミステリーとしても最後の方は非常にストーリーの展開が早く、またドンデン返しが重なって、ページを繰るのがもどかしくなるほどです。
なかなかに読み応えがあるミステリーでした。
ライム登場の作品は本作以降もシリーズ化されているので、こちらも読んでみたいと思います。

「ボーン・コレクター<上>」ジェフリー・ディーヴァー著 文藝春秋 文庫 ISBN4-16-766134-9
「ボーン・コレクター<下>」ジェフリー・ディーヴァー著 文藝春秋 文庫 ISBN4-16-766135-7

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