本 「ミステリーの人間学 -英国古典探偵小説を読む-」
最近の休日は、私事でドタバタしていて、映画を観にいけていません〜。
なのでこのところブログの記事は本の感想が続いてしまっています。
本ならば、どこでも読めますからね。
本著はタイトルにあるようにイギリスの古典探偵小説が、人間をどのように描いているかということを解説している本です。
ミステリーという分野は時代や地域によっていろいろなタイプの作品があります。
謎解きをメインとしたいわゆる「本格」と呼ばれる作品群であったり、松本清張などを代表とする「社会派」というジャンルもあります。
このようにミステリーという分野の中でいろいろな作品がありますが、そもそも「ミステリー」とは何ぞやというときに、本著の冒頭でフォースターの言葉が紹介されています。
これは「ストーリー」「プロット」について語った言葉なのですが、わかりやすいので紹介します。
フォースターは「ストーリー」とは時間の順に配列荒れた出来事と定義しました。
「王が死に、それから女王が死んだ」というのは「ストーリー」。
「プロット」とは出来事を語ったものであるが、因果関係に重点が置かれているもの。
例えば「王が死に、悲しみのあまりに女王が死んだ」となると「プロット」になります。
そして「女王が死んだ。おその理由を知る者は誰もいなかったが、やがてそれは王の死に対する悲しみのゆえであったとわかった」となると「ミステリーを含んだプロット」となります。
ポイントは「ミステリーを含んだプロット」は「それから?」「なぜ?」と問いたくなるということです。
ミステリーというと「戦争もの」とか「歴史もの」といったようなジャンルという感じを受けるかと思いますが、そもそも優れた物語というのは「ミステリー」を含んでいると言っていいでしょう。
イギリスの古典探偵小説と言えば、コナン・ドイルやアガサ・クリスティーがあがりますが、本著の著者はディケンズもこの系譜に入れています。
ディケンズの時代はミステリーが一つのジャンルとして成立はしていなかったですが、そもそも優れた小説というものが内在するものとしてミステリーがあり、それをディケンズにも感じるということです。
確かにおもしろい作品は小説にせよ、映画にせよ、「それから?」「なぜ?」と問いたくなるものが多いですよね。
起こってしまったことの因果を知りたいというのは人間が持つ本能なのかもしれません。
なかでもイギリスの古典探偵小説は、人間という存在を見つめて謎を解くというアプローチが強いということです。
確かにアガサ・クリスティーの小説は、トリックもさることながら、登場人物の人間性と関係性が作品の魅力だったりします。
アガサ・クリスティーの小説は一時期すごくはまってほとんど読んでしまったのですが、本著を読んでまた久しぶりに読みたくなりました。
「ミステリーの人間学 -英国古典探偵小説を読む-」廣野由美子著 岩波書店 新書 ISBN978-4-00-431187-4
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