本 「続巷説百物語」
タイトルに「続」とあるように京極夏彦さんの「巷説百物語」の続編となります。
京極さんと言えば「京極堂」シリーズですが、こちらの「巷説百物語」シリーズは江戸時代末期を舞台とした時代小説となっています。
数編の短編が語られ、それが実は一つに繋がっているという構造ですが、こちらは京極さんの盟友である宮部みゆきさんの時代小説でも多くみられるところです。
時代小説と言っても京極さんの作品ですから、登場してくるのはやはり妖怪。
ですが、本シリーズで語られる妖怪も「京極堂」シリーズと同様に実際に存在するというものではなく、人間の心の隙間や仕組みの中に潜むとらえどころのないものとして扱われています。
「この世には不思議なことなど何もないのだよ」
とは京極堂が小説の中でよく口にする言葉ですが、本作も同じ考え方に立脚しています。
「京極堂」シリーズにおける京極堂の役割を果たすのが、本作では「小股潜りの又市」になります。
本作の語りは山岡百介ですが、こちらが「京極堂」シリーズの関口にあたりましょうか。
京極さんの作品らしく、本作もかなり分厚く読み始めるまでは躊躇しますが、読み始めてしまえばあれよあれよと読み進んでしまうのは、やはりさすがです。
決してライトノベルのように読みやすいわけではないのですが、それでも読ませてしまう物語の力が京極さんの作品にはあるように思えます。
本作もそれぞれの短編も読み応えがあり、それぞれの作品の又市の仕掛けに喝采をあげますが、全体としても大きなドラマチックな流れがあり、その点も読み進めさせる力かもしれません。
このあたりは宮部みゆきさんの作品もそうですね。
「巷説百物語」を読んでからずいぶんたって本作を読みましたが、本シリーズはあと「後巷説百物語」「先巷説百物語」とリリースされていますので、こちらも読んでみたいと思います。
京極夏彦作品「後巷説百物語」の記事はこちら→
京極夏彦作品「前巷説百物語」の記事はこちら→
「続巷説百物語」京極夏彦著 角川書店 文庫 ISBN978-4-04-362003-6
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