本 「ひかりの剣」
「夢見る黄金地球儀」に続いて、海堂尊さんの作品「ひかりの剣」を読んでみました。
医療を題材にした作品を書かれることが多い海堂さんですが、本作の題材は剣道。
なぜ、剣道と思ったのですが、海堂さん自身が医大生の頃、剣道をやられていたということで納得しました。
剣道が題材とは言え、本作も海堂作品ワールドの一つとなっており、「ジェネラル・ルージュの凱旋」の速水と「ジーン・ワルツ」の清川が二人主人公となっています。
最近読んだ中では剣道というと「武士道シックスティーン」のシリーズがありましたが、本作も同様に速水と清川という二人のまったくタイプが異なる剣士の成長を描いています。
先に「ジェネラル・ルージュの凱旋」と「ジーン・ワルツ」を読んでおくと、そこでの速水や清川の性格や行動原理がどのように形作られてきたかというのが、本作を通じてわかるのがおもしろいところです。
剣道と医療がどのように結びつくのかな、と読む前には思いましたが、読んでみるとこの二つというのは実はよく似通っているということがわかります。
医療というのは緊急の患者を前にその人の生命をかけた一発の勝負です。
それはまさに剣道の勝負に似たものでいかにその一瞬の勝負にかけ、勝利をできるかという点において似ているのですね。
「ジェネラル・ルージュの凱旋」で速水が大胆かつ獅子奮迅の活躍をし、そして強いリーダー・シップを発揮できるのは医大生時代の修練によるものであるということがわかります。
速水、清川の性格を見抜き、それぞれを導くのが、のちに東城大学病院長になる高階であるところがなかなか気が利いています。
この人、昔からタヌキだったんですね。
あと田口・白鳥シリーズの田口もちらりと登場します。
いよいよ「桜宮サーガ」の世界観も時間軸、空間軸ともに広がっていきますね。
海堂尊作品「夢見る黄金地球儀」の記事はこちら→
海堂尊作品「ジェネラル・ルージュの凱旋」の記事はこちら→
海堂尊作品「ジーン・ワルツ」の記事はこちら→
「ひかりの剣」海堂尊著 文藝春秋 ハードカバー ISBN978-4-16-327270-2
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