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2010年1月 2日 (土)

本 「マグマ」

「ハゲタカ」の真山仁さんの作品です。
全く別の物語ですが、「ハゲタカ」でも出ていたゴールドバーグ・キャピタルという外資ファンドはこちらでも登場します。
本作が題材としているのは「地熱発電」。
真山さんは「ハゲタカ」もそうでしたが、現在日本の社会について一般の僕たちがよく知らないことを深くえぐり、そしてまた一級のエンターテイメントに仕立てあげる力がある作家さんだと思います。
本作では地熱発電を通じて、日本のエネルギー政策について切り込んでいます。
地熱発電とはどのようなものか知っている方はいらっしゃいますでしょうか。
基本的に発電というものは、水力であろうと、火力であろうと、また原子力であろうと、基本的には水または水蒸気でタービンを回して電気を起こすということは変わりません。
水力はダムに貯水された水の位置エネルギーを電気に変えます。
火力・原子力はそのエネルギーによりいったん熱エネルギーを発生させ、それによりエネルギーを持った水蒸気の力でタービンを回し、電気エネルギーに変換します。
実はこの方式は熱エネルギーすべてが電気エネルギーに変換されるわけではありません。
火力でだいたい3割強しか電気エネルギーにはなりません。
7割の熱エネルギーは無駄になっているわけです。
この熱エネルギーは火力発電の場合は、ご存知の通り石油を燃やして得るわけです。
つまりは7割の石油は無駄になっているわけなのですね。
地熱発電も基本的には同じで、その熱エネルギーを地熱に求めるのです。
地球は地下にいけばいくほど温度が上昇します。
そこには熱水層(温泉などもそう)があり、その熱せられた水のエネルギーでタービンを回すのです。
地熱についてはもともと地球内部の熱エネルギーを利用しているわけで、二酸化炭素排出や放射能の危険などはないエコで安全なシステムです。
また日本は火山国であり、熱源には事欠かないので、日本に向いているシステムとも言えましょう。
ただ原子力発電に比べ投資効率が悪い(設備投資が必要だが生み出すエネルギーは少ない)ために、あまり顧みられなくなったのです。
本作は、効率ばかりを気にして環境や安全などに力を入れてこなかった電力会社の体質について課題を提起しています。
それでは地熱発電に代替しきれるかというとなかなか難しいかとは思います。
本作で提起されているプラン、すなわち原子力発電については第三者機関による安全性のチェックを高め、現在の火力発電分について地熱発電に置き換えは、よい考えだなと思いました。
地熱発電は初期投資はかかりますが、海外の燃料に頼ることがないので、エネルギー安全保障という点からしても優れているような気がします。

つらつらと書いてきましたが、決して本作は小難しい話ではありません。
地熱発電にかける人々のマグマのように熱い想いもしっかりと描かれ、エンターテイメント作品としてもきちんと出来上がっていますので、ご興味ある方は是非一度読んでみてください。

真山仁作品「ハゲタカ」の記事はこちら→

「マグマ」真山仁著 角川書店 文庫 ISBN978-4-04-394309-8

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