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2009年12月12日 (土)

「仮面ライダー×仮面ライダーW&ディケイド MOVIE大戦2010」 終わりと始まり

幼い頃、「仮面ライダー」と「ウルトラマン」という番組に出会ったのは、その後の僕の趣味嗜好を大きく決定づけることとなりました。
その2大シリーズが40年以上経った今でも新作シリーズが作られ続けていることは、特撮ファンとしてはたいへん嬉しいのです。
そしてこれらのシリーズの新劇場版が公開されるのもさらに嬉しい。
そして、悩ましい・・・。
2作品(加えて「宇宙戦艦ヤマト」も加えると3作品)が、すべて本日12/12同時に公開とは・・・。
どれも思い入れのあるシリーズなので早く観たいのですけど、どれから先に観ようか・・・。
しばし悩んだあげくに一つの結論に達しました。
初日にすべて観る!
ということでこれら3作品を一カ所でやっている数少ないシネコンの一つ、豊洲ユナイテッドシネマに朝一から駆けつけました。
まずは「仮面ライダー×仮面ライダーW&ディケイド MOVIE大戦2010」からスタート!

今回の「仮面ライダー」の劇場版は「MOVIE大戦2010」と銘打ち、3部構成になっています。
第1部は平成仮面ライダーシリーズ10周年の節目で制作された「仮面ライダーディケイド」のほんとのほんとの完結編。
第2部は現在好評放映中の「仮面ライダーW」の誕生秘話を描く「ビギンズナイト」。
そして第3部はディケイドとWのストーリーがクロスオーバーするというストーリーになっています。
この3部構成はなかなかトリッキーな構造をしているのですが、「ディケイド」と「W」はプロデューサーとメインライターが異なるのにも関わらず(監督は一緒ですべて田﨑竜太監督)、たいへん上手にまとめられていました。

まずは第1部の「仮面ライダーディケイド 完結編」からみてみましょう。
テレビシリーズ「仮面ライダーディケイド」の記事でこのシリーズの特徴、内容には触れたので、こちらではちょっとメタな話を。
「全てを破壊し、全てを繋げ」
これはテレビシリーズの予告で流れるキャッチコピーですが、これが平成仮面ライダーシリーズにおける「ディケイド」という作品の役割を言い表していると思います。
また本作劇場版でも「創造は破壊からしか生まれない」という台詞があります。
拙ブログでも不定期で記事を掲載している「平成仮面ライダー振り返り」でもしばしば触れているのですが、平成仮面ライダーシリーズのそのエッセンスを一言で言い表すとすると「革新性」だと思います。
「昭和仮面ライダー」シリーズ、「ウルトラマン」シリーズは基本的にその世界観を引き継ぎ、発展してきました。
「仮面ライダー」で言えば○号ライダー、「ウルトラマン」ではウルトラ兄弟というように。
けれども平成仮面ライダーシリーズは、新しい作品ごとに異なる世界観を提示し、毎年チャレンジを行って発展してきました。
この試みは仮面ライダーというシリーズを陳腐化させることなく活性させ、さらに上へさらに上へと自らハードルを設けながらそれを越えていくというサイクルを生み出しました。
その一つの到達点が「ディケイド」であると思います。
けれども一年ごとにがらりと変わる世界観は「仮面ライダー」というシリーズにとっては諸刃の剣でもあります。
毎年リセットされる世界観は活性化にも繋がりますが、ややもするとシリーズの継続性を失わせることに繋がります。
これは「ディケイド」の白倉プロデューサーが雑誌等のインタビューでよく触れている点です。
いわく、今の子供というのは10年前の「クウガ」をもう知らない。
今までの10年間の平成仮面ライダーはその親が(昭和の)「仮面ライダー」を知っていた世代であり、だからこそ親も懐かしがって盛り上がってきた。
けれどもこの後10年間は親が「仮面ライダー」に触れていない世代である(昭和から平成にかけて本シリーズがしばらく制作されない期間があったため)。
なので今後「仮面ライダー」はつらい時期に入るのではないか。
そのためには「仮面ライダー」をブランドとして確立しなくてはいけない、というのが白倉プロデューサーの考えです。
番組をブランドとして捉え、マーケティング的な分析をしたこの発想はまさに慧眼だと思います。
平成仮面ライダーのDNAである「革新性」を持ちつつ、ブランドとしての「継続性」を持たせるか、これが課題であったのです。
そのためには一度「平成仮面ライダー」とは何なのか?ということを総括、棚卸ししなくてはいけない。
その役割を担ったのが「ディケイド」であったわけです。
まさに「全てを破壊し、全てを繋げ」です。
10年目のお祭り的な側面だけで「ディケイド」を捉えてはいけません。
「ディケイド」という作品を通じ、過去の平成仮面ライダーをもう一度一つの作品群として視聴者の記憶に植え付けるという試みを行っているのです。
「仮面ライダー」のブランド化、これこそが「ディケイド」で製作陣がやろうとしたことでしょう。
「ディケイド」を作ると決めたとき、東映は「仮面ライダー」シリーズを半永久的に育てるという決意を示したと言ってもいいかもしれません。
物語の中でディケイドは全ての世界を一度破壊しました。
そしてまた再びライダーの世界は復活しました。
「俺たちの世界は旅の中にある」
ラストで司はこう言いました。
これは、これからもずっと「仮面ライダー」を作り続けるという制作陣の決意表明であるとも捉えられます。
これからもスタッフには革新的な「仮面ライダー」を生み出し続けていただきたいと思います。

さて次は第2部「仮面ライダーW ビギンズナイト」です。
「ディケイド」という前代未聞のイベントの後だけに、「W」が放映前はどうしても小さく見えてしまうのではないかという心配をしていました。
けれど蓋を開けてみれば、これがなかなかにおもしろい。
今までの(昭和仮面ライダーに通じるような)「仮面ライダー」的な要素も持ちながら、新しい要素をつけ加えていく「革新性」は依然として持っています。
舞台となるのは架空の都市、風都。
そして仮面ライダーWになるのは私立探偵コンビである翔太郎とフィリップの二人の主人公。
これは十分に革新的です。
ですがテレビシリーズは基本的に「事件編」「解決編」の2話構成というポピュラーなフォーマットに則っています。
これはとてもわかりやすくシンプルな構成であり、シリーズ途中からでも入りやすいという利点があると思います。
とはいえ、一年間のシリーズを縦軸で繋ぐ謎などは提示されているので、それが物語にドライブをかけます。
その謎の一つ、「仮面ライダーWはどのように生まれたのか」という問いに答える、言わばテレビシリーズの前日譚となるのが本作です。
メインプロデューサーは初めての「仮面ライダー」メイン担当となる塚田英明氏(サブでは以前担当していました)。
塚田プロデューサーはメインではスーパー戦隊シリーズを担当していました。
「特捜戦隊デカレンジャー」では刑事もの、「魔法戦隊マジレンジャー」ではファンタジーもの、「獣拳戦隊ゲキレンジャー」ではカンフーものと、他のジャンルのエッセンスを既存の戦隊シリーズに上手に持ち込むセンスがある方です。
彼が「仮面ライダーW」で持ち込んだジャンルは「ハードボイルドもの」。
ようはレイモンド・チャンドラーとかそういう感じですね。
はじめてこの話を聞いた時は、特撮ものに馴染むのかと思ったのですが、始まってみれば思いのほか相性がいい。
この世界観についてはいずれテレビシリーズが終了した時の記事で触れたいと思います。
今回触れておきたいのは出演者についてです。
まずは主人公の一人、左翔太郎を演じている桐山漣さん。
ハードボイルドになりきれない半熟ぶりもテレビシリーズではぴったり、本劇場版では翔太郎が負っている心の傷も上手く演じていました。
彼は手足の細かな動きがカッコいいのですよね。
もう一人の主人公フィリップを演じる菅田将暉さんは本シリーズがデビュー作ということですが、全くそんな感じがしません。
演技の天才かもしれません。
菅田さんは声もいいのですよね。
そして鳴海亜樹子役の山本ひかるさん。
亜樹子は今までの仮面ライダーのヒロインではなかったような役ですが、ぴたりとはまったコメディエンヌぶりが素晴らしい。
キャラクターは大阪からやってきたという設定ですが、ご本人も大阪出身ということで、関西ノリがいい具合に出ています。
この三人のアンサンブルが観ていてとても気持ちいい。
そして本劇場版では、鳴海荘吉役の吉川晃司さんに触れないわけにはいかないでしょう。
まさにハードボイルドを体現している男の中の男を、非常にカッコ良く演じてくれています。
荘吉は、もう吉川さん以外は想像できません。
それこそフィリップ・マーロウが言うような台詞をしっかりとキメてくれるので、ぐっときました。
これからテレビシリーズも盛り上がっていきそうなので、この後の展開も楽しみにしたいです。

最後に第3部ですが、第1部の「ディケイド」と第2部の「W」の世界がクロスオーバーします。
先に触れたようにこの構成は非常に巧妙で、「ディケイド」の最終回としても「W」のエピソードとしても破綻なくよく練られていると思います。
最後のオールファイナルフォームのそろい踏みは、やはりライダーファンとしてはしびれます。
Wのファイナルフォームライドなども「なるほど!」と手を打ちたくなるようなアイデアで、さすがです。

今までの10年の総括、そしてこれからの10年のスタート。
終わりと始まり。
これからも「仮面ライダー」シリーズが大きく発展していくであろうと確信した作品でありました。

テレビシリーズ「仮面ライダーディケイド」の記事はこちら→
「劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー」の記事はこちら→

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コメント

たいむさん、こんにちは!

吉川さん、カッコ良かったですよねー!
まさにハードボイルドを体現してくれていました。
翔太郎が憧れるのもわかります。

Wはけっこうテレビシリーズもおもしろくて、お気に入りです。

投稿: はらやん(管理人) | 2009年12月20日 (日) 10時22分

>荘吉は、もう吉川さん以外は想像できません。
ほんとですよねー。
良くぞ出演してくれたものと思います♪

えーというところもありましたが、概ね楽しませてもらえました♪

投稿: たいむ | 2009年12月20日 (日) 09時12分

えいさん、こんばんは!

そうなんですよ、平成仮面ライダーというのは一続きのシリーズじゃないんです。
さらに劇場版はテレビシリーズのパラレルワールドであったり、後日談だったりするので、テレビを観ていないとわかりにくいところはありますよね。
そのいいところ、悪いところをわかった上で、マーケティング的によく考えられた打ち手であったと思います。
そんなアクロバティックなことをやっていながらも楽しめる作品になっているのは凄いなと思います。

投稿: はらやん(管理人) | 2009年12月19日 (土) 23時29分

こんばんは。

なるほど。
平成仮面ライダーには、そのような歴史があったのですね。
一作ごとに世界観が違ったのか。
だったら、時折、劇場版を観て
なに?と思っていた自分も納得。

とても分かりやすい解説。
ありがとうございました。

投稿: えい | 2009年12月19日 (土) 21時31分

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