本 「笑う警官」
先日映画で「笑う警官」を観たので、原作小説も読んでみました。
佐々木譲さんの作品は二冊目ですが、本作もなかなかおもしろい。
もともと本作のタイトルは「うたう警官」だったそうで、映画化が決定し、文庫化となったときに改題したということです。
旧タイトルの「うたう」とは「歌う」ではなく、白状してしまうといった意味です。
道警がずっと行っていた捜査費流用などの暗部を、警官が公的に認める証言をしてしまう、このことは警察組織としては「裏切り」に近い行為であり、「うたう」ということは警察からすれば忌むべきこととなるわけです。
映画と同様に、その証言を行おうとする津久井巡査を、道警幹部が殺人犯として陥れ射殺命令まで出してしまう、そして津久井の無実信じる佐伯ら有志の刑事が真の謎を解こうと動くというのが本作です。
映画よりもより、現在の警察組織に現場レベルでは反感と恥ずかしさをもっているというのが、小説では強く描かれているように思いました。
警察全体の腐敗を指摘するというよりも、現場で懸命に捜査活動をしている人を尊う作者の気持ちが伝わります。
ラストの真犯人などについては映画と大きく異なります。
映画はあまり救われない終わり方のような気がしますが、まだ小説は少し希望を感じます。
映画のラストを観ると映画については「笑う警官」でよいと思いますが、小説版は「うたう警官」のほうがしっくりする気がします。
映画を観て、小説を読んだ方はわかるとは思いますが、「笑う警官」は真の犯人(もしくは警察という組織)であり、「うたう警官」は津久井なのです。
すなわち小説の方が良心ある警察を主としていることが明確であり、そこに救いを感じるような気がしました。
地道な捜査で証拠を固め、真犯人に迫っていく様子は派手さはないですけれども、探偵小説とは違うまさに警察小説というべき抑制されしっかりとした読み応えがある作品でした。
映画「笑う警官」の記事はこちら→
道警シリーズ第二作「警察庁から来た男」の記事はこちら→
「笑う警官」佐々木嬢著 角川春樹事務所 文庫 ISBN978-4-7584-3286-3
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