本 「エビと日本人」
僕が勤めているのは食品会社であるということはこのブログでも触れていますが、扱っている商品の中でもエビを使った商品は売れ筋トップ5の中の多くを占めます。
どれだけ日本人はエビが好きなのか、と思ったりしていたので、本著を手に取りました。
本著のテーマは、エビという食材を通じて日本と世界の関係、なかでも経済関係を解こうというものです。
出版されたのが1988年とずいぶん古いので、中で触れられるデータはそのまま現在の状況を表すものではありませんが、食と世界経済というのを理解するのには役立ちます。
現在、加工食品で使われているエビはほぼ輸入です。
これは、日本で消費されるエビを日本での生産だけではまかなえない、つまり国内品だけでは需要と供給に追いつかないというのが大きい理由です。
また国産品は量が少ないため、高価であるというのも理由の一つです。
手頃な値段で皆が食べられるためには、輸入食材というのは欠かせません。
昨今の食品にまつわる事件のおかげで、輸入品は安全ではないというイメージがついていますが、これは正しくはありません。
手前味噌にはなりますが、僕の会社の輸入原料の生産現場の品質管理は尋常じゃないほど徹底しています。
下手な日本国内での品質管理よりも徹底していると思います。
なんとなく安心だから国内品がいいという気持ちはわからないわけではないですが、それは国内品だから安全だということにはなりません。
ようは国産だろうが、輸入品だろうが、関わっている企業がどれだけ消費者の安心・安全に力を入れているかということで判断するべきなのです。
国産だけは到底、日本の食を支えることはできません。
国内自給率を高めることは、リスク回避上大切なことですが、一足飛びに国産品だけで賄うことはほぼ不可能であると言っていいでしょう。
もう日本もそして世界もグローバル経済として密接に結びついているため、それを断ち切ることはできないのです。
日本が輸入をやめれば輸出先の労働者は大ダメージを受けます。
本著でも語られるように買う側の強い立場で、生産者を無用に搾取したり、環境にダメージを与えることを行ってはいけません。
ようは相手側にも無頓着にならず食の生産に関心を持つことが大事なのだと思います。
本著の中で著者が、エビの輸入が増えたのは国と商社と食品会社と流通の仕掛けというようなことを書いていますが、この意見には賛成できません。
グローバルの流通網が発達し、またその国の経済が成長すれば、より滴価で良いものを求めようとするのは至極当然なことなのです。
これは日本に限ったことではありません。
経済が発展すればするほど、より深く世界各国は結びついていくのです。
だからこそ、自分の国だけでなく、相手の国のことも考える、想像できるということが大事なのです。
輸入品はよくないと言う人がいますが、そういう人の中でどれだけそれらの原料を生産している方々のことを知っている人がいるでしょうか。
どれだけその方たちが真面目に取り組んでいるということを。
表面的なイメージだけでなく、その本質を見極める目が消費者にも必要になってきているのでしょう。
「エビと日本人」村井吉敬著 岩波書店 新書 ISBN4-00-430020-7
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