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2009年12月20日 (日)

本 「トヨタモデル」

数年前、不況と言われ各社が苦しんでいる中でトヨタの利益が1兆円を超えたとき、トヨタの経営モデルが話題となりました。
ちなみに勤めている会社は売上がやっと1兆円を超え、やった!となっていたときだったので、彼我の差にがっくりきた覚えがあります(比べるなっていうの)。
トヨタと言えば、「カイゼン」と外国語にもなっているように、日々の細かな取り組みにより、より効率的な業務フローを作り上げていくというのが、ひとつのスタイルです。
その時、勤めている会社でも経営のサイドから、トヨタをモデルにいろいろと考えるようにいうような話がありました。
そのとき買っていたのが、本著です。
でも読まぬままずっと「つんどく」になってました。
一世風靡したトヨタも昨年来の世界的経済の冷え込みを受け、昨年の利益は赤字に転落しました。
あの頃、みなが賞賛した「トヨタモデル」とはいかなるものなのか、ちょっと気になり本著を手に取りました。
トヨタの経営の理念の一つは「カンバン」方式に見られるような徹底的な効率化でしょう。
そして社員にそれを徹底する風土作りもあると思います。
この会社ほど経営と社員が一つの会社としてまとまりがあるのも珍しいかと思います。
どちらかというと社員がかなり会社に(言い方は悪いですが)取り込まれているような感じもあり、一時期話題になった日本的経営の典型とも言えます。
社員が会社のために知恵を絞り、それを汲み上げる仕組みができています。
またかなり技術オリエンテッドな風土があるようにも見えます。
もともと技術者が立ち上げた会社ですから、そのようなDNAがあるのかもしれません。
この日々の「カイゼン」、そして技術開発力は、今でもトヨタの力であると思います。
今年に入り、プリウスを始めエコカーが他社に比べても好調で、回復の兆しを見せているのはやはりトヨタの底力でしょうか。
しかし、輸出に頼っているというトヨタのビジネスモデルは、世界経済が回復しているとは言い切れない状況の中で、まだ危うさは含んでいると思います。
本著を読んで、トヨタの文化の中で一点気になったのは、さきほど少し触れた「物わかりの良い社員」です。
トヨタが史上最高益を出した時も、組合はベアゼロ要求であり、また会社も賃上げを認めませんでした。
当時、僕もこれは少々以外ではあったのです。
まだ先行き不安だということだったのかもしれません。
けれどもふりかえってみれば当時は戦後最長の好景気と呼ばれた時でした。
しかし生活者からすれば景気実感みたいなものはほとんどなく、バブル崩壊後の不況感がずっとありました。
この差はなんなのでしょう。
これは好景気で会社が利益を出していても、グローバル競争という点ではまだ不安があり、人件費を抑制したということであるのだと思います。
ですが、そのために生活者は消費を控えることが習い性になっていってしまったのだと思います。
現在輸出が振るわない中、内需拡大が課題となっています。
けれどもずっと節約をしてきた消費者からすれば、いまさらモノを買えと言われても欲しいものなんかないという感じではあると思うのです。
トヨタは日本経済の中でも最も大きな影響力のある会社です。
途中で触れた史上最高益時のベアゼロというのは、他の会社の姿勢にも影響を与えました。
そのため好景気なのに賃金抑制というへんな状態になってしまったのです。
そのゆがみが今になって大きく影響が出ているのだと思います。
「トヨタモデル」というのは1社だけをみる場合には優れたモデルだと思います。
けれどもそれが国全体にとって最適であるかどうかはやや疑問があります。
日本でも最大級の規模を持つトヨタは自社だけでなく、日本の経済自体にも責任があるということを自覚する必要があるかと思います。

「トヨタモデル」阿部和義著 講談社 新書 ISBN4-06-159784-7

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