« 「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」 旧作の粗悪コピー | トップページ | 「戦場でワルツを」 恐怖で歪む記憶と事実 »

2009年12月13日 (日)

「日本沈没(1973年)」 日本人を描く

実はこちらのブログの記事の第1回目は草彅剛さん、柴咲コウさん出演の「日本沈没(2006年)」でした。
これはこれで僕は楽しめたのですが、実はオリジナルの「日本沈没」は観ていなかったからかもしれないです。
ローランド・エメリッヒ監督のディザスタームービー「2012」が公開中ですが、やはり日本のディザスタームービーの傑作と言われる本作を観ないといけないと思い、以前録画していた本作を観てみました。
ううむ、やはり傑作と言われることだけはあります。
2006版も、また「2012」もそうですが、災害シーンの特撮などを目玉にしがちです。
ですのでややもすると人間ドラマが薄い、もしくはステレオタイプだったりしてしまいます。
本作も製作された1973年という時代においてはかなり手の込んだ特殊効果を使っていますので、そのような特撮は見応えあります。
けれども本作が描いているのは、国が消滅するということが起こった場合どのようになるかというシミュレーションと、そして日本人、日本民族とは何かということだと思いました。
まずはシミュレーション映画として観ると、本作は非常に良くできています。
一つの国家が消滅するという事態が起こった場合、日本政府はどのように対応するのか。
国際社会はどのように対処するのか。
ハリウッド映画にありがちなわかりやすいアクションに逃げるのではなく、淡々と脱出計画が練られて行く様、また外交交渉の様を描いていきます。
1億数千万の人間が難民化した場合、人道的には支援しなくてはいけないけれども、それを抱えるということのリスク(単純なコスト上の問題、国家内国家化し自国民と対立する問題等)もあるという他国のジレンマにも触れられます。
このあたりの緻密なシミュレーションは、平成「ガメラ」を彷彿させました。
たぶん「ガメラ」は本作の影響を受けたのではないかと思われます。
そして本作のテーマという点で見てみると、それは日本民族とは何かということです。
本作では日本という国土を失った日本人のその後は描かれていません。
けれどもその前途は多難であることは想像されます。
世界を見回してみても、ユダヤ人にしてもパレスチナ人にしても、国土を失った民族は長い間艱難辛苦を味わっています。
本作の中で日本政財界の影のフィクサーである箱根の老人が、日本人は幼いというような意味の台詞を言っていたと思います。
海洋に隔てられ、日本民族というほぼ単一の民族は、居心地のいい揺りかごのような4つの島で暮らしていた子供です。
近代化して侵略戦争を行ったのも、外界を知らぬ子供ならではの暴挙であったのでしょう。
その後、再び日本人は居心地のいい我が家の中に戻りました。
けれども国土を失うという事態になったとき、日本人はイヤでも大人にならなくてはいけなくなったのです。
国際社会という本当の「社会」に出たとき、子供は大人にならなくてはいけないのです。
本作が作られて36年、日本人は大人になったのでしょうか。
たぶんまだなれていません。
バブル期、戦争という手段ではなく、経済という手段で日本は対外進出を盛んに行いました。
けれどもやはりそこには子供ならではの慢心があったのでしょう。
結局はまた日本人は揺りかごの中に戻っているというのが、現在ではないでしょうか。
ただ日本民族の幼さだけを描いているのでもないと思います。
例えば、淡々と国民が脱出するためにプロジェクトを遂行しようとするメンバーたち。
この姿には日本人の実直さというのが表れていたと思います。
また脱出する人々の姿にはパニックといったようなものはあまり見られません。
「2012」等を観ると、我先にとか、自分だけ良ければという行動が見られましたが、皆思いのほか秩序だった行動をしています。
これも日本人ならばさもありなんという感じがします。
そして丹波哲郎さんが演じる山本首相の有事にあたってリーダーシップには感銘を受けました。

このような点からみると、2006年版がどうしても薄っぺらいものに思えてしまいます。
リメイクをするならば、何十年か経った時代に生きる者として日本人を捉えようとしても良かったのかなと思いました。

最後に。
最初の方であった日本海溝での潜水艇のシーンがあります。
深い海中なので無音で潜水艇が進んでいくカットがあります。
こちらを観ていて「2001年宇宙の旅」のディスカバリー号のポッドのシーンを思い出しました。
宇宙と海中と異なりますが、とてもよく似ているのですよね。
「2001年宇宙の旅」の公開は1968年なので、本作は影響を受けているかもしれません。
「2001年宇宙の旅」の原作者であるアーサー・C・クラークの初期の作品には海中を舞台にしたSF小説がいくつかあります。
クラークは宇宙と同様に、海にも謎とロマンを感じていたと言われています。
なにかそのあたりも繋がっているような気がいたしました。

「日本沈没(2006年)」の記事はこちら→

にほんブログ村 映画ブログへ

|

« 「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」 旧作の粗悪コピー | トップページ | 「戦場でワルツを」 恐怖で歪む記憶と事実 »

コメント

hideakifujiさん、こんばんは!

こちらと平成版はそもそも狙いが違いますよね。
平成版はどちらかといえば、エメリッヒ的なスペクタクルな映像とわかりやすいドラマを見せるというスタンスであったと思います。
たいしてこちらは、日本沈没という事件を触媒としながら、日本人とは何かということを描いていたと思います。
この視点で比べると、平成版はやや物語が矮小化しているのは否めません。
けれども狙いがそもそも違いますから、比べるのは不毛かもしれませんね。

投稿: はらやん(管理人) | 2009年12月22日 (火) 23時33分

実はね僕は 雑誌 東宝特撮映画DVDコレクションという隔週発売号でたまたま手に入れました

何か登場人物も歴史に残るいまとなっては故人となられた名優の方々が現役世代で登場していますよね
必然的に登場人物の強烈な個性と人間を描ききった心理描写等並々ならぬものを感じました

恋愛模様に関してはややスタートが時代を象徴しているかなと思った、確かにラストのすれ違いはジーンとくるものがあったものの 平成版の日本沈没のほうがヒーローヒロインの掛け合いに関しては共感できるものが強かったような
ただ個人的には昭和版も平成版も甲乙つけがたい気がします
なぜなら平成版もやはり信頼の置ける首相が登場します、首相が飛行機事故で亡くなった後の後任の首相の悪に徹していたキャラぶりも魅力がありました、主演の草薙剛が最後までヒーローとして貫徹している点など平成版もなかなかいい味出しています。
ただ現在の日本のVFXレベルの世界レベルに溝を空けない飛躍振りは感心しています
近年一作一作と公開される邦画の特撮映画をみて揺さぶられ続けています。
そんな流れが始まったのは2002年の山崎貴監督のリターナーあたりからです
その山崎監督は宇宙戦艦ヤマトの実写版のメガホンに抜擢されたみたいで期待はますます膨らんできます…少し話題が途中から反れたみたいです
恐縮です

投稿: hideakifuji | 2009年12月22日 (火) 07時58分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/186553/47015744

この記事へのトラックバック一覧です: 「日本沈没(1973年)」 日本人を描く:

» 日本沈没【1973年オリジナル版】 [黒猫のうたた寝]
リメイク版観終わったら、無性にオリジナルが観たくなりました。結構、記憶に遠いので、観終わったら、こんな映画だったんだなぁ~って感じだけど(笑)そいえばオリジナルの題字・・・リメイクとほぼ同じだったみたいやっぱり意識的だったのかなぁ?<リメイク(笑)日本海溝を... [続きを読む]

受信: 2011年7月29日 (金) 23時53分

» 『日本沈没』(1973) [【徒然なるままに・・・】]
「誕生」の次は「沈没」です(笑)。これで日本の最初から最後までを網羅・・・している訳はありません。以前この2本立てを企画した名画座がありましたが、内容には何の関連もない、題名の組み合わせの妙ですな。 こちらは小松左京のベストセラー小説の映画化で、TVシリーズにもなっていまして、当時自分が観ていたのはTV版の方です(但し序盤だけ。確か大河ドラマの裏番組だったので、途中で父親にチャンネル権を奪われました・・・)。映画版の方は、かなり後になって観ました。 今回はリメイク版がいよいよ公開されるので、... [続きを読む]

受信: 2011年7月30日 (土) 09時28分

« 「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」 旧作の粗悪コピー | トップページ | 「戦場でワルツを」 恐怖で歪む記憶と事実 »