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2009年11月14日 (土)

本 「博物館の誕生 -町田久成と東京帝室博物館-」

東京上野にはいくつもの博物館や美術館があります。
国立科学博物館、国立西洋美術館、東京都美術館などが立ち並んでいる様は、アート好きにはたまらないエリアとなっています。
そのエリアの中心となっているのは、やはり東京国立博物館でしょう。
この博物館では、まさに国宝級の展示会が開催されています。
今年の薬師寺展にも多くの人が訪れたことは記憶に新しいことだと思います。
博物館というものが存在し、そこに行けば国宝を観ることができるというのは、当たり前のことと思えるのですが、そこには先人たちの苦労がありました。
本著では、国立博物館、かつての東京帝室博物館の設立に尽力した町田久成の業績をたどりながら、日本の博物館の誕生を解説しています。
町田久成は幕末期の薩摩藩の出身であり、若い頃にイギリスへ渡ったことがあります。
そこで大英博物館に接して感銘を受け、日本での博物館設立のために奔走しました。
時は明治維新。
時代が激動したときです。
開国した日本は、急速に西洋化を進めていきます。
その過程において、日本の伝統的なものへの軽視が顕著になりました。
この時多くの貴重な資料が海外へ流出しました。
昨年ドラマ「篤姫」で有名になった天璋院が嫁入り時に使用した駕籠がアメリカで「発見」されたことが話題になりましたが、明治維新時にはこのような流出がしばしば起こっていたのです。
また大政奉還により天皇中心の体制になったことにより、いわゆる廃仏毀釈の運動が起こったのもこの時です。
日本は仏教と神道が混合した独特な宗教観を築いてきました。
けれども明治期に神道を重んじるようになり、いくつもの寺が廃されることになりました。
そのときに貴重な仏像等が焼かれたり壊されたりしたのです。
歴史が激動する時、それまでの歴史を否定するようになるのはよくあることです。
けれどもそれを「なかったことにする」ということは、変革した自分たちをも否定することになりかねません。
そういう意味で、歴史を保存し、考証することは大事なことと考えます。
その機能を博物館は持っているのです。
町田久成は海外から搾取した展示品が飾られる大英博物館を観て、自国の歴史が急速に失われていくことに対する危機感を持ったに違いありません。
先に書いたように急速な西洋化が進む中での博物館設立にはいくつものハードルがありました。
その障害を越えた結果、我々の前に上野の森の博物館・美術館群があるのです。
上野の博物館には時折足を運ぶのですが、設立をした人について考えることはありませんでした。
今度訪れた時に、町田久成について想いを馳せようと思います。

「博物館の誕生 -町田久成と東京帝室博物館-」関秀夫著 岩波書店 新書 ISBN4-00-430953-0

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