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2009年10月12日 (月)

「ラーメンガール」 脚本家が一番わかってない

東京にいる恋人の元へやってきたアビー。
けれども恋人は彼女を捨てて去ってしまいます。
彼を失い、仕事にもやりがいを感じず、ぽっかりと心に穴が空いたような状態のアビーが出会ったのは、一杯のラーメン。
小さなラーメン屋の主人が作るラーメンに体も心も暖められたアビーは、ラーメン職人になろうと決心をします。

もっとトンデモニッポンになっているかと思いきや(ところどころあったけど)、意外とまともに描かれていました。
お話としては定石通りの展開で、驚きもなければ感動もないというのが考えものですけれども。
それでも見れるくらいには作品を救っているのは、西田敏行さん、余貴美子さんを始め、思いのほか豪華だった日本のキャストでしょうか。
これが無名の日本人エキストラ、もしくはカタコトの日本人風だったらダメダメでしたでしょう。
西田さんの頑固オヤジは安心感ありますねえ。
池中弦太が年をとったらこんな感じというイメージですかね。
泣かせることができる贅沢なキャストでしたが、心の琴線に触れるというまでにはいたらなかったです。
その理由はやはり脚本でしょう。

師匠の一挙手一投足を観察し、それを懸命に学ぼうとするアビー。
けれども師匠には魂が入っていないと言われてしまいます。
魂を一杯のラーメンに込めようと、アビーが新しい恋人と別れる気持ちを内に秘めながら、がんばった作ったラーメンを常連さんが食べるシーンがあります。
そのラーメンを食べたお客さんたちは悲しい気分になり、さめざめと泣き始めます。
これはアビーの気持ちがお客さんに伝わったということを表現したいのだと思いますが、これは師匠が言った魂を入れるということとはちょっと違う。
ラーメンに魂を込めるというのは、自分の気持ちを相手に伝えるということではなく、相手の気持ちをくんで給するということなんですよね。
「みんなマイセルフ(自分らしい)て良いやがって」
と師匠は頑固なアビーに言います。
あくまで大切にしなくてはいけないのは、自分自身ではなくて、相手なんです。
茶の湯でも一期一会と言うように、一度限りという気持ちで相手にもてなしをする。
それが魂を込めるということなんです。
本作では庶民の食べ物ラーメンというものを通じて日本人が大切に思っている心根を描いてくれるのだと思っていました。
でもこの場面で脚本家が一番その心をわかっていないというのを露呈してしまって、一気に冷めてしまいました。
日本人キャストは良かっただけに、ちょっと残念な感じです。

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