「ホノカアボーイ」 恋せよ乙女
昨日観た「プール」もそうでしたが、「かもめ食堂」以来癒し系ムービーとも言えるジャンルができてきていますね。
本作「ホノカアボーイ」もそのような系譜に位置づけることができると思います。
とはいえ、荻上監督の「かもめ食堂」「めがね」はこれといった物語上の事件が起こらないですが、本作は物語としての起伏をつけるストーリーラインはしっかりしています。
そういう点では、より観やすい作品かと思います。
最近活躍が目覚ましい岡田将生さんが、本作では初めて主演(レオ役)を務めています。
彼は「天然コケッコー」「重力ピエロ」等でもそうでしたが、作り込んでいない自然体であるように見える演技がいいですよね。
作品の雰囲気によく合っていたと思います。
それよりも何よりも、倍賞千恵子さんが演じるビーがとても可愛らしい。
ビーのレオへの想いは恋のようなものでもあるのでしょうか。
彼女は若い時に愛する夫を亡くして以来、ずっと一人で暮らしています。
時がゆっくりとゆっくりと流れているハワイ、ホノカア。
彼女の時間もゆっくりとゆっくりと流れてきていたのでしょう。
「人のために料理を作るのは久しぶり」
と初めてレオに食事を振る舞ったとき、ビーは言います。
それから彼女はレオのために毎日食事を作るようになるのです。
レオは野菜嫌いなようですから、健康のためにビーがいろいろ工夫をします。
誰かのために料理をするっていうことが、彼女の生活に充実を与えているように見えます。
レオが来る時に、きれいな服を買ってみたり。
レオに彼女らしき女性ができたときに、意地悪をしてみたり。
ビーは年齢的にはおばあさんという年ですけれど、まさに恋する乙女のように活き活きとして見えます。
老けていくというのは当然肉体的なものが大きいのですが、精神的なものも大きいですよね。
肉体が老けていくことはどうにも止められないですが、人を恋するとか、誰かのために働くとか、そういう充実感を与えてくれる気持ちというのを持ち続ければ、若々しく見えるのでしょう。
ビーを観ていてそう思いました。
年をとってもこうありたいものです。
ホノカアで過ごした1年間はレオにとっても意味がある時間であったと思いますが、ビーにとってもかけがいのないものであったのですよね。
冒頭に書いた癒し系ムービー、舞台となるのは日本以外の場所なんですよね(「めがね」は沖縄ですが、異国みたいなものです)。
「かもめ食堂」はフィンランド、「プール」はタイ、「ホノカアボーイ」はハワイ・・・。
日常から離れたゆっくりと流れる時間というものを描くのは、日本ではだめなのでしょうね。
なんだか癒し系ムービーを観ていると、逆に日本という国のせわしなさというものを感じてしまいました。
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コメント
rose_chocolatさん、こんばんは!
うん、こちらは癒し系ムービーであるけれど、しっかりとレオの成長とビーの恋というストーリーがありましたよね。
そういう点では観終わって、しっくりくる感じがありました。
「プール」は確かにまとまっていないかなあ。
「かもめ食堂」ともちょっと違うけど、メッセージが強く感じないのかな。
投稿: はらやん(管理人) | 2009年10月25日 (日) 19時48分
『プール』はまるでダメでしたが、『ホノカアボーイ』は大好きです。
最近『かもめ・・』と同じような作品がどんどん増えてきましたね。
結局そういう系は全部観ているんですが、何が違うのかと考えたら、完結しているかしていないかってところだと思いますね。
映画なんで、そのなかでテーマがまとまってないとまずダメかなあと思います。
そういう意味で『プール』は、観終わっても何が言いたかったのかよくわからなかった。 でもこれは、シンプルに人の恋心をまとめてたような感じで、お見事だったと思います。
投稿: rose_chocolat | 2009年10月24日 (土) 19時47分
Agehaさん、こんばんは!
こちら原作ものだったんですねー。
調べてみたら、吉田カバンのディレクターの方が書いた本なんですね。
今度読んでみようかな。
蒼井優ちゃん、深津絵里さんはかなり贅沢な使い方でしたねー。
投稿: はらやん(管理人) | 2009年10月22日 (木) 21時06分
コレも珍しく映画よりも原作文庫を先に読んだんですが
いくつかの映画の話が出てきたり
ホノカアですごすきっかけになった父とのつながりだったり、
ハワイ観光案内みたくここでの生活を楽しむ
レオの日記みたいな本でした。
映画版のホノカアボーイはレオというよりは
ビーの恋物語に針を振り切って作った気がします。
レオが癒されるというよりは
ビーにしろ、コイチじいさんにしろ、
なんていうか
「ハワイなのに若者がロクに出てこない不思議な世界」で
若者よりも人生を謳歌してる二人をみて
レオがどう感じたのか・・・そういう作品だった気がします。
元カノとケンカした、冒頭のシーンは要らなかった気がします。
あんな形で蒼井優ちゃんを使うなんて。うぅぅ・・・。
投稿: Ageha | 2009年10月19日 (月) 14時26分