本 「ハゲタカ」
テレビ、映画と映像化された「ハゲタカ」、ようやっと原作本を読みました。
テレビ版は未見なのですが、映画はたいへん印象に残っていたので、すっかり鷲津=大森南朋さん、芝野=柴田恭平さんのイメージで読みました。
読んでいて違和感もなかったのは、ぴったりのキャスティングだったのでしょうね。
外資ファンドというとなんとなく悪者の印象があったのですが、本作を読むとちょっとイメージが変わりますね。
ファンドをハゲタカ云々というよりも、ずっと経営がガラス張りになっていなかった日本企業というのも問題あったのかなと。
この作品で書かれているバブル崩壊からの「失われた10年」というのはまさに社会人になってリアルタイムで経験してきたことなので、自分としてはとても真に迫って感じました。
もちろんフィクションだとは思いますが、あの時、日本企業というのは戦後ずっと溜まってきた膿が一気に吹き出したということだったのでしょう。
それまでは世界を買うとまで言っていた日本が凋落するとはバブルの頃は誰も思っていなかったのですよね。
もしかすると鷲津のように海外から日本を見た方が、その危うさを感じられたのかもしれません。
日本の経営者というのは、経営のプロっていう人は少ないような気がします。
だからといってMBAをとれば経営のプロになれるわけもありません。
この作品では華麗でかつ獰猛なマネーゲームが描かれますが、それは本作のエンターテイメント性の一面であるかと思います。
本質は経営というものがそのような戦術論的なものではなく、明確なビジョンを提示できているかということを語っているような気がします。
経営理念というのはどこの企業でも持っているかと思いますが、それを社員にしっかりと根付かせてこそ、本当の経営と言えるのでしょう。
鷲津と芝野は手法は違いながらも、経営というものの本質については同じような考え方を持っているような気がしました。
とはいえ、そのような経営論的な話ばかりでなく、単純にエンターテイメント小説として読めるところが素晴らしいですね。
続編「ハゲタカⅡ」の記事はこちら→
映画「ハゲタカ」の記事はこちら→
「ハゲタカ<上>」真山人著 講談社 文庫 ISBN4-06-275352-9
「ハゲタカ<下>」真山人著 講談社 文庫 ISBN4-06-275353-7
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