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2009年10月 4日 (日)

本 「人のセックスを笑うな」

人を好きになる時、自分では説明できないけれどとても愛おしいと思うことがあるのではないでしょうか。
その人が客観的にきれいだってことではなくて、それでもなんだか可愛くて、愛おしくて、そして切ない気持ち。
ずっとくっついていたいと思うような気持ち。
そんな気持ちが、この作品に溢れています。
最近はこんな気持ちになることがめっきりと少ないのだけれど(非常に問題なのだが)、そういう気持ちであった時のことが、本作を読んで瑞々しいまでに甦りました。
文字だけの小説で、そんなふうに人の気持ちを揺らすことができるのは、とてもすごいことです。
たぶんこの作品を読んだ人は、磯貝くんに共感して切なくなるのではなく、自分自身の昔の感情を思い出すので切ない気分になるのではないでしょうか。
自分がずいぶん前にすごい好きだった人がいたときがあります。
会っていて幸せだったのですが、ある日ご飯を食べていた時に泣けてきたときがあるです。
こうやって書くとバカみたいなのですが、それこそこんな幸せなのがずっと続くのだろうか、続かなくなったらどうしようとふと思ったら、ぽろっと泣けちゃったんですよね。
自分でも驚いちゃったりしたのですけど、何か本作で磯貝くんの物語を読んでいて、そのときの気分を思い出しちゃったんです。
結局その人とはうまくいかなくなってしまい、相当落ち込んだ日々を送り、自分の中では忘れたいことトップ10に入っていて封印していたのですけれど、思い出してしまいました。
けれど今では痛いとか辛いとかいう感じではなくて、うまくは言えないのだけれど、切ないという気持ちなのですね。
本作も冒頭は磯貝くんが、かつての相手ユリのことを思い出すということから入ります。
そのときに磯貝くんが思っているであろう気持ちと、自分の気持ちがシンクロしちゃったんですね。
不思議なものです。

松山ケンイチさんが主演した映画化作品は未見なのですが、今度観てみようかな・・・。

「人のセックスを笑うな」山崎ナオコーラ著 河出書房 文庫 ISBN978-4-309-40814-9

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コメント

rose_chocolatさん、こんにちは!

こういうところで自分の感情を書くのはあまり抵抗感がないんです。
映画や本のレビューというのは専門家の方はやはり客観的にというのが基本スタンスだとは思うのですが、普通の人というのはその映画を観た時、その本を読んだときの心情に左右されると思うのですよね。
だからここではあくまで僕の感じたスタンスでいこうと思ってます。
映画とか本というのは、自分でもよくわかっていなかった感情とか考えを掘り起こしてくれます。
そういう意味で自分自身を観直す作業にもなるんですよね。
そういうことをつらつら書きたいと思います。
読んでる方にとっておもしろいのかよくわからないけど・・・。

投稿: はらやん(管理人) | 2009年10月11日 (日) 05時49分

忘れたい思い出。。。 blogに書いてしまうなんてすごい勇気ありますね!
でもそれだけこの小説に引き出されてしまったのでしょうか?
時々、あまりにも自分に似た状況の映画観たり本読んだりしちゃうと、しばらくブルー入っちゃってどうしようもないことありますね。
その作品の主人公に自分を投影しちゃうから。

『人セク』は観ましたが、みるめがユリに未練たっぷり・・・ って雰囲気があったんで、そういう思い出だと、ちょっと覚悟して鑑賞しないといけないかもしれないかな。。。?

投稿: rose_chocolat | 2009年10月 8日 (木) 20時15分

真紅さん、こんにちは!

本作ドラマチックな事件などが起こるわけではないんですが、それだけにたぶんみんな経験している切ない気持ちというのをとてもうまく表していると思いました。
山崎ナオコーラさんの他の作品も読んでみたくなりました。
映画の方も今度観てみますね。

投稿: はらやん(管理人) | 2009年10月 5日 (月) 06時37分

はらやんさん、こんにちは。いつもTBありがとうございます。
私は映画を観てから小説を読んで、山崎ナオコーラさんにはまってしまいました。
あと読んでないのは『浮世でランチ』だけです。
はらやんさんの涙、わかるな~~~。
恋愛関係や恋心が持続しない、ってこと、私たちは本能的にわかってるのかもしれないですね。
でも、別れることで「思い出」という形で永遠になる。
映画は、松ケンがイタイケでたまりませんでした。
ユリのイメージは、小説とはかなり違います。
是非ご覧になってみて下さい。
TBができないのが本当に残念です。で、悔しいのでURL貼り付けさせて下さいね。

http://thinkingdays.blog42.fc2.com/blog-entry-400.html

投稿: 真紅 | 2009年10月 5日 (月) 01時25分

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