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2009年10月 4日 (日)

本 「原理主義とは何か -アメリカ、中東から日本まで-」

原理主義というと、なんとなくイスラム原理主義→テロといったイメージがあります。
しかしそうではなくキリスト教(特にアメリカ)にもキリスト教原理主義というのはありますし、こちらの本で紹介されているのは、インドのヒンドゥーや、日本にですらそういうことはあると論じています。
原理主義とはそもそもなんなのか?
それは聖書やコーラン等に書かれていることを文字通りすべて真実として受け止める考え方です。
日本人からすると驚くべきことですが、アメリカでは進化論を否定し、学校で教えない州もあるということです。
このようなことから、原理主義という思想がただ昔に戻りたいという懐古的な考え方であるかというとそうではありません。
この本を読めばわかるように、原理主義というのは近代だからこそ、その考え方がより鮮明になってきたというふうに言えるでしょう。
原理主義を研究するプロジェクトで「シカゴ大プロジェクト」というのがあるようなのですが、彼らは
原理主義のイデオロギー的特徴として以下の点を挙げています。
・近代化による宗教危機に対する反応
・選択的な教義の構築
・善悪二元論的な世界観
・聖典の無謬性の主張
・週末論的世界認識と救世思想
また組織的特徴としては以下の四点を挙げています。
・選民思想
・組織のウチとソトとの明確な区別
・カリスマ的な指導者の存在
・厳格な規律、行動規範
ようは旧来的に守っていた考え方が、近代化により破壊される、また切り捨てられるということに対する危機感が原理主義という動きを生み出しているのです。
彼らには追い込まれているという考え方、被害者意識のようなものがあるように感じます。
いわゆる原理主義の中でも過激的な組織のリーダーというのは、意外にも高等教育を受けていた方も多いのです。
だからこそ、彼我の差や差別的な視点といのも実感しており、そこでの閉塞感が原理主義、そして武力闘争へ向かっていってしまうのでしょう。
窮鼠猫を噛むといった状況になっているのかもしれません。
この状況を変えていくためにはやはり対話しかないかと思います。
武力闘争はお互いの感情をより頑にするだけであり、解決には結びつかない気がします。
ブッシュ時代は明らかにキリスト教原理主義が強まっていました。
あのままイスラム原理主義者との戦いを続けていたら、さらに大きな事件が起こったかもしれません。
アメリカの大統領がオバマになり核廃棄を訴え、新しい日本の総理大臣は「友愛」を掲げています。
そのまま彼らのめざすビジョンが実現できた時、原理主義という考え方も衰退していくかもしれません。

「原理主義とは何か -アメリカ、中東から日本まで」小川忠著 講談社 新書 ISBN4-06-149669-7

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