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2009年9月14日 (月)

本 「聖女の救済」

本作品は東野圭吾さんの「容疑者Xの献身」に続き、「ガリレオ」シリーズの長編第二弾になります。
前作「容疑者Xの献身」はガリレオこと湯川と、犯人との関係が主軸になっていましたが、本作では湯川はどちらかというとサポートとなっています。
本作で事件の解明をリードしていくのはは湯川の旧友である草薙、そしてその部下である新人女性刑事内海になります。
この二人の対比がおもしろい。
草薙は極めて刑事らしい刑事で、証拠を固め、犯罪の真相に迫ろうとしていきます。
けれどもいつもの草薙とは違い、彼は容疑者に恋をしてしまいます。
それが事件の解明に影響を与えるのか。
本人もうっすらとその自覚があり、あくまで刑事としての職務を貫こうとしつつも、気持ちの揺れ動く様子が丁寧に描かれます。
対して内海は女性ならではのカンから当初より被害者の妻を怪しいと睨みます。
内海は「ガリレオの苦悩」から登場したキャラクターであり、またテレビシリーズでは湯川とコンビを組む活躍をしています。
けれども小説の内海はテレビシリーズとは異なり、女性のカンというのを大事にしながらも、非常に冷静な頭脳を持った刑事です。
つまり草薙はコツコツと積み重ねて真相に達していくタイプ、内海はまず答えの目標を置き、そこにいたるアプローチを考えるという異なるタイプであることがおもしろかったです。
刑事の仕事としては内海のやり方は予断が入るので、かなり危険な手法であるとは思いますが。

タイトルにある「救済」。
この意味はラストで明らかになります。
読み終わったあと、なるほどと腑に落ちました。
ミステリーものではタイトルって大事ですよね。
「○○殺人事件」などというタイトルの作品もありますが、これはなんとも味わいがない。
ミステリーのタイトルは、読み終わったあとに、その作品の骨子を一言で言い当てているものが素晴らしいと思います。
本作のトリックはなかなかに思いつかないものでした。
女性ならではの手法といえるでしょう。
その点「容疑者Xの献身」とも対比的とも言えるなと思いました。

「ガリレオ」シリーズの長編第一弾「容疑者Xの献身」の記事はこちら→

「聖女の救済」東野圭吾著 文藝春秋 ハードカバー ISBN978-4-16-327610-6

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コメント

ミチさん、こんにちは!

東野さんの作品はスルスルっと読めるんですけれど、けっこう考え抜かれていますよね。
トリックなども本格に比べてもいいくらい練られていますし。
ああいうトリックだったとは、まったく想像できませんでした。
タイトルについても犯人の気持ちを表している、なるほど!なタイトルでした。
こちらも映画化とかあるんですかねー。

投稿: はらやん(管理人) | 2009年10月12日 (月) 06時12分

こんにちは♪
TBありがとうございました。
最後になってなるほど~とタイトルが腑に落ちました。
秀逸なタイトルだと思いました。
これもいつもの東野作品と同様すらすらとあっという間に読めてしまいました。

投稿: ミチ | 2009年10月11日 (日) 19時20分

hitoさん、こんばんは!

トリックはまさに盲点と言ったところですよね。
湯川が虚数解と例えたのも、真実がわかったときには腑に落ちました。
被害者は男からみても共感性なかったです。
なんと身勝手なのかと思ってしまいました。
彼は最後まで自分が死ぬのかわからなかったのでしょうね。

投稿: はらやん | 2009年9月15日 (火) 22時39分

こんにちはー

巧い展開でトリックでしたね!全然想像できませんでした。女性からすると全然同情できない被害者・・嫌な奴でした。(だからといって・・というのはありますが)

最初と最後の会話の時間軸のズレが東野さんらしくて好きです!

投稿: hito | 2009年9月14日 (月) 12時16分

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