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2009年8月30日 (日)

「プライド」 雑草と薔薇

一条ゆかりさんの漫画「プライド」の映画化作品。
声楽家を目指しアルバイトをしながら音大に通う萌(満島ひかりさん)。
そのアルバイトの一つであるハウスクリーニングで訪れた豪邸に、社長令嬢の史緒(ステファニーさん)がいました。
史緒もオペラ歌手を目指している音大生で、萌も同じ目標を持っているということでプラチナチケットのオペラ観賞に誘います。
けれどもそこで萌は、自分の育ってきた環境とは全く違う上流社会に圧倒されつつも、そこまで這い上がる決心を固めます。

好きな金子修介監督の作品でありながら、公開時なぜ観なかったかというと、やはりベタな(と僕は思っていた)少女漫画チックな設定のため。
昔の大映ドラマ(「スチュワーデス物語」とか)じゃないけれど、女同士の嫉妬や争い、イジメっていうのはちょっと苦手なんですよね。
本作も、少女漫画によくある設定、ちょっと意地悪でプライドの高い金持ちの息女と、貧乏でありながらも緒あふれる才能がある少女といった「ガラスの仮面」的な作品だと思っていたのです。
ですが、公開時も他の方のブログを覗いたりすると、けっこう評判も良かったようなので、気になっていたのではありました。
観始めて最初はやはりステレオタイプ的なキャラクターなのかなあと思ったりしたのですが、史緒のお父さんの会社が倒産してから以降はけっこう物語にぐいぐいと引き込まれていきました。
萌が這い上がると決心してからの意地悪っぷりがなかなかで。
満島ひかりさんは童顔ですが、かわいい顔をしながらもけっこうキツいことをしたりしていて。
「私、辛いことがあると、力が湧いてくるの」
という台詞がありましたが、踏まれも踏まれても伸び上がるまさに雑草人生。
ただ萌も成り上がりを目指すだけの少女ではなく、恋をするし、相手の真の才能を認める目もあります。
対して史緒もよくある意地悪でプライド高いお嬢様というキャラクターとは一味違っていました。
タイトルにある「プライド」を持つ女性ですが、これは悪い意味ではなく、良い意味での「誇り」を持っているように見えます。
「気高い」と言ってもいいかもしれません。
劇中でも例えられていましたが、史緒は大事に育てられた一輪の薔薇。
この「気高さ」が萌から見ると「お高くとまってる」ように見えてしまうのですが。
二人ともによくあるステレオタイプのキャラクターから微妙にずらしているところがおもしろかったです。
二人はライバルでありながらも、互いの才能には感じるところがあります。
中盤とラストの二人のデュエットのあたりは聴きごたえもありました。
歌いながら段々と才能と才能がぶつかりさらに上のものに昇華していくという感じがでていました。
ステファニーさんは歌手ですし(その分演技はお世辞にもうまいと言えない)、満島ひかりさんも沖縄アクターズスクール出身ですから歌はお手の物です。
よくあるこの手のドラマのようにライバル同士が気持ちを通じ合い親友となるみたいな安易な展開にならないところもポイント高し。
萌と史緒は結局、生き方、人生に対するものの見方が違うわけです。
それを慣れ合うわけではなく、それぞれの生き方を通し、そしてステージの上でまた二人の才能が激突することを予感させる終わり方は良かったのではないかなと思います。

それにしてもミッチー、こういう役をやらせたら敵う人はいないですね。

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コメント

rose_chocolatさん、こんにちは!

これroseさんの記事読んで観ようかなーと思ったんですよ。
よくある少女マンガ系と思いきや、意外と見応えありました。
神野のキャラはミッチーしか考えられないくらいはまってました。

投稿: はらやん(管理人) | 2009年8月31日 (月) 17時34分

おお~、これご覧になりましたか。
すごく楽しめた1本でした。
ドロドロ系でもあるんだけど、どこかで冷静な目線もあったりして、ちゃんとまとまっているのが楽しめた理由かな。
2人のコントラストも面白かったし。 萌がコンテストの舞台で、いきなりそれまでのいい子キャラを捨てて豹変するところなんか好きですね。
ミッチーも、こういうのさせたらホント鉄板でした。 すごい満足です(笑

投稿: rose_chocolat | 2009年8月30日 (日) 22時55分

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