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2009年7月19日 (日)

本 「ジウ」

誉田哲也さんの小説で初めて読んだのが、「武士道シックスティーン」。
こちらの作品は、性格が全く異なるダブルヒロインの爽やかな青春ものでした(ちなみに「武士道シックスティーン」は成海璃子さん、北乃きいさんで映画化されるそうです)。
本作「ジウ」も対照的な性格の婦人警官のダブルヒロインの警察小説ということで読んでみたのでしたが、けっこうハードな内容でびっくり。
確かに本作のダブルヒロインである伊藤基子、門倉美咲の性格は「武士道シックスティーン」の香織と早苗を思わせるところがあります。
けれども次々に起こる事件から明らかにされていく日本の暗部や人間の醜さみたいなもの、また事件そのものの猟奇的な側面みたいなところがあり、「武士道シックスティーン」の爽やかさみたいなものを期待して読むとしっぺ返しを食らいます。
とはいえおもしろくないというわけではなく、というよりとてもおもしろいです。
物語がどこに転がっていくかわからない展開はとても引きが強い。
人間の持つ善良な面、暗黒な面を、そしてその間をさまよう面を、美咲、ジウ(事件を引き起こす中国人の名)、基子が象徴しています。
特に基子が暗黒面に転げ落ちていく様というのは、ぶつかると思いつつもそちらに引き寄せられていくような危うさを感じて、息を詰めながら読んでいるような感じがしました。

本作は三部作でそれぞれ、警視庁特殊犯捜査係(SIT)、警視庁特殊急襲部隊(SAT)、新世界秩序(NWO)というサブタイトルがついています。
劇中で美咲はSITに、基子はSATに、ジウが(NWO)に属しています。
SITとSATというのは映画などで聞いたことがあったのですが、その属する組織も役割も違うんですねえ、初めて理解しました。
SITは刑事部に、SATは警備部の組織ということで、「踊る大捜査線」じゃないですが警察内部での組織間のせめぎ合いも描かれています。

誉田哲也さん作品「武士道シックスティーン」の記事はこちら→

「ジウⅠ 警視庁特殊犯捜査係(SIT)」誉田哲也著 中央公論新社 文庫 ISBN978-4-12-205082-2
「ジウⅡ 警視庁特殊急襲部隊(SAT)」誉田哲也著 中央公論新社 文庫 ISBN978-4-12-205106-5
「ジウⅢ 新世界秩序(NWO)」誉田哲也著 中央公論新社 文庫 ISBN978-4-12-205118-8

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