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2009年6月13日 (土)

本 「海の底」

有川浩さんの作品で通称「自衛隊三部作」と呼ばれている作品の一つです。
「塩の街」(未読)が陸上自衛隊、「空の中」が航空自衛隊、そして本作「海の底」が海上自衛隊を題材にしているということでそう呼ばれているようです。
三部作と言ってもそれぞれのお話は独立しておりますが。
有川浩さんは「図書館戦争」から読み始めたので、あのベタ甘な感じ(笑)が印象づいていましたが、本作は甘さは控えめでした(夏木と望のぶきような感じは有川テイスト)。
本作読んで思い浮かべた映画は「ガメラ2 レギオン襲来」でした。
レガリスはまさにレギオンのイメージでしたね。
平成「ガメラ」シリーズは、現在の日本に実際に怪獣が表れた場合、国はどのように対応するかというシミュレーションを行った作品でした。
「空の中」もそうでしたが、本作も同じように同様に生物災害が発生した場合のシミュレーションを行っています。
特に本作では警察の描き方がなかなか真に迫っています。
怪獣らしきものが出たとして、よくある怪獣映画のようにいきなり自衛隊を出動することはたぶんできません。
現行法制ではさまざまな縛りがあるためです。
そのような場合、国はどのようにするかというと、警察の警備部(機動隊など)でなんとか耐えることしかないでしょう。
もともと警察は警備が任務であるために、攻撃するための装備は持っていません。
圧倒的不利の中で、警官たちは自分たちの仕事に誇りを持ち、立ち向かいます。
このあたりの任務に対しての責任感というものは、有川さんの作品において共通して描かれているところです。
このあたりのまっすぐさをストレートに描いてくれるところは有川さんの作品を読んでいて気持ちがいいいところですね。
警察や自衛隊のシミュレーションを行っているといっても、本作はそれだけではありません。
レガリスによって占拠された海上自衛隊基地内の潜水艦に閉じ込められた自衛官二人と見学にきていた子供たちのドラマも並行して描かれます。
大きな視点だけでなく、小さな視点でも描かれているために、このシミュレーション小説の深さがでて、かつ感情移入もしやすくなっていると思います。

「三部作」で残りは「塩の街」だけ。
こちらも読まないと。

有川浩作品「塩の街」の記事はこちら→
有川浩作品「空の中」の記事はこちら→

「海の底」有川浩著 角川書店 文庫 ISBN978-4-04-389802-2

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コメント

SOARさん、こんばんは!

有川さんの自衛隊ものは、平成ガメラの影響を多分に受けていますよね。
おっしゃるとおり、警察の警備部の描き方は新鮮でした。
最近の警察ものは「踊る大捜査線」以降内部のいがみ合いを描くことが多いですが、有川さんの作品というのは、けっこう真面目な警察官や自衛官が自分の任務に忠実にがんばっている姿が描かれていて好感がもてます。
僕もあの自衛官の台詞はぐっときました。

投稿: はらやん(管理人) | 2009年6月20日 (土) 23時19分

はらやんさん、こんにちは♪
私もちょうど先週に読み終えたところです。
これ、「空の中」より好きかもしれません。
潜水艦内の子供たち個々の描写がいいですね。
あ、平成ガメラはファンなんです。
なるほどレギオンですか~!

警察機動隊と自衛隊の縄張り意識も描かれますが、
現場で動く双方の隊員たちが互いを尊重しあうような表現もよかったと思います。
自衛隊に引き継ぐために機動隊が取る屈辱の作戦について、
自衛隊のある指揮官が部下に対し
「見届けろ。あの苦闘の上に自衛隊が出動することを胸に刻め」
と言うくだりが印象的でした。
(近いうちに記事にします・・・するつもりデス)

投稿: SOAR | 2009年6月20日 (土) 16時43分

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