「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」 彼らとの旅で得るもの
シリーズ第三作にして完結篇の本作、3時間を軽く超える長尺にちょっと観てみようというにはなかなかヘビーなんですよね。
今日は朝から雨で、出かける気が失せてしまったため時間ができたので、ゆっくりと家で本作を観賞です。
過去二作品のレビューでも書いたのですが、ピーター・ジャクソン監督の中ツ国という世界を構築しようとする試みはさらにさらに繊細かつ大掛かりになっていると思います。
小さな小道具から、背景に見える世界まで、監督のこだわりが隅々まで行き届いているように思えます。
本シリーズの成功後、雨後の筍のようにファンタジー映画が作られましたが、未だに本作を越えると納得できるような作品が現れていないのは、やはりオタクと言われるピーター・ジャクソン監督のこだわりのためでしょうか。
今後越えるとしたら、ピーター・ジャクソン製作、同じくオタク監督と言われるギレルモ・デル・トロ監督の「ホビットの冒険」ですかね。
また本シリーズが他のファンタジー作品との違いを際立たせているのはそのテーマ性でしょう。
「指輪」が象徴する人間の心に存在する悪の側面。
独占欲、支配欲、猜疑心、嫉妬等、人間の心にはこのような悪意が間違いなく存在します。
心の悪しき側面は、安易さ、強大さゆえに軽々と人を呑み込もうとします。
本作に登場するキャラクターは多かれ少なかれ、これらの悪意と良心とのせめぎ合いに苦しみます。
それは「指輪」によるということではなく、そもそも人の心がそのような心を持っているということなのでしょう。
また人間というものは、この人は悪人、この人は善人と簡単に割り切れるものではありません。
「指輪」に取り憑かれたゴラムが多重人格になっているのもそのことを象徴しています。
ひとりの人間にも悪しき心と良き心がせめぎ合い、戦っているのです。
まるで本シリーズで描かれる善と悪の戦いのように。
良き心を全うするのは、力と覚悟が必要です。
成り行き任せでは善の道を歩くことはできません。
その道を歩くという決心がいるのでしょう。
フロドが指輪を捨てにいく旅で、アラゴルンが王に至る旅で、彼らは良きことを成そうとする決心をしているのですよね。
安易に流れない覚悟を彼らは心の中に抱くのです。
彼らの旅は決して楽なものではありませんでした。
3回にわたる本シリーズ、彼らといっしょに旅をした10時間で、観ている僕たちも良き心を全うする困難さを体験します。
けれども重荷を背負いつつ旅したその先には、なにか簡単には得難いものがあることも知ることができます。
彼らの旅から自分でも良き心を持つことへの勇気をもらうことができるシリーズでした。
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