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2009年5月31日 (日)

本 「ジェネラル・ルージュの凱旋」

海堂尊さんの人気シリーズの第三弾、映画を先に観ていましたが、原作の方をやっと読みました。
第二弾の「ナイチンゲールの沈黙」とほぼ同じ時期を舞台にしていて、この二作が絡まりながら進んでいきます。
ですので、田口センセは次から次へといろんなところに呼び出されて大忙しです。
原作の方は映画と違い、殺人事件のような大きな事件は発生しません。
発生するのは収賄疑惑のみ。
ですので「チーム・バチスタの栄光」のような謎解きミステリーの要素はほとんどありません。
だからといっておもしろくないわけではなく、謎解きがないのにハラハラとして先をドンドン読みたくなる感じがあります。
ハラハラするのは、幾度となくある会議の場面。
海堂さんの作品ではけっけうわかりやすい比喩を上手く使うところがありますが、会議の場面は相手の言葉を受けて、カウンターで攻撃するといった決闘のような趣きがあります。
普通は会議のシーンなんて退屈そうに思えるのですが、まったくそんなことはありません。
僕は「ナイチンゲールの沈黙」よりは断然こちらの方が好きです。

ひるがえって映画の方を考えてみると、この原作をベースにして変えるべきところは変え、変えてはいけないところは変えないといったのをうまくやっているなと思いました。
原作は「ナイチンゲールの沈黙」とリンクしている(それが原作のおもしろいところの一つですが)ので、そちらとかぶっているキャラクターがいるのですが、映画はそのあたりをばっさりと切っています。
逆に一本の映画として成立させるために、殺人事件という要素を加えています。
これはややもすると原作本来のポイントをずらしかねないと思いますが、この要素をとてもうまくとりこんでいると思いました。
映画では速水と花房の最後のシーンが好きだったのですが、原作でもそこはちゃんとありました。
映画の方は原作に登場する如月というメインキャラクターを登場させていないので、かえって二人の関係というのが浮かび上がってきていて、うまく最後のシーンが活かされていたと思います。
原作と映画、それぞれのメディアの特性を活かした物語の作り方になっていると思います。

映画「ジェネラル・ルージュの凱旋の記事はこちら→」
小説「チーム・バチスタの栄光」の記事はこちら→
小説「ナイチンゲールの沈黙」の記事はこちら→
小説「イノセント・ゲリラの祝祭」の記事はこちら→
小説「アリアドネの銃弾」の記事はこちら→

「ジェネラル・ルージュの凱旋<上>」海堂尊著 宝島社 文庫 ISBN978-4-7966-6767-8
「ジェネラル・ルージュの凱旋<下>」海堂尊著 宝島社 文庫 ISBN978-4-7966-6769-2

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受信: 2009年6月 4日 (木) 12時31分

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受信: 2013年6月 2日 (日) 00時45分

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