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2009年5月17日 (日)

本 「のぼうの城」

直木賞ノミネート、09年本屋大賞2位の時代小説です。
本作がデビュー作の和田竜さんは1969年生まれだそうですから、僕とほぼ同年代。
このくらいの年の作家で時代小説を書く方は珍しいような気がします。
そういう若い感覚が反映されているからか、時代小説にありがちな堅苦しいところはありません。
わかりやすいカタルシスみたいなものがあって、帯にある「ハリウッド映画の爽快感!」という惹句も納得できます。
歴史物を読み慣れていない方の入り口として、入りやすい作品に思えます。

舞台となるのは戦国時代、豊臣秀吉が小田原の北条攻めを行っているとき。
小田原包囲網を行っているさなか、秀吉の重臣石田三成は、北条についている成田氏の居城忍城を攻めます。
押し寄せる石田軍は二万、対して城を守るのは百姓たちも入れてたった二千。
タイトルにある「のぼう」というのは、「でくのぼう」のこと。
石田三成との戦いのときの城代成田長親は、風采のあがらない男ということで「のぼう」と呼ばれていたのです。
長親は武芸もさっぱりで、何故か農作業が好きで手伝いにいくのですが、根っからの不器用のため役には立たず百姓たちにも「のぼう」様と呼ばれる始末。
けれども幼子のように純真な長親は、百姓たちや武士たちの心をつかんでおり、それが石田軍との戦いの中で力となっていくのです。
圧倒的な石田軍に対し、武でもなく知恵でもなく、ただその「人望」だけで乗り切る長親の姿、そして彼についていく武士や百姓たちの想いに、爽快感を感じます。
功名心や損得感情でもなく、また義など頭でっかちな思想でもない、素直な長親はとても新鮮に思えました。

「のぼうの城」和田竜著 小学館 ソフトカバー ISBN978-4-09-386196-0

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コメント

リラさん、こんにちは!

そうですねー、時代小説って慣れないと読みにくいところありますが、本作はそういうところはありませんでしたよね。
そのあたりがベストセラーになった一因かもしれないですね。
映画化作品はのぼうさまのキャスティングが個人的には意外だったのですが、どのようになるか楽しみです。

投稿: はらやん(管理人) | 2011年6月29日 (水) 06時30分

はらやんさん、こんばんは~(^^)
TBありがとうございました♪
この作品は堅苦しさがなくて読みやすかったですね。のぼう様の素直さが清清しくて気持ちよかったです。
映画化もされてるということで、今から公開が楽しみです♪

投稿: リラ | 2011年6月27日 (月) 23時26分

みゆみゆさん、こんにちは!

そう、あまり時代小説を読んでいない方でも読みやすい小説かなと思いました。
映画版はどんな感じになりますけね。
最近何気なく時代劇の映画が多いですが、今までの作品とは違う個性が感じられるといいなあ。

投稿: はらやん(管理人) | 2010年11月 6日 (土) 07時13分

こんばんは!
私も『のぼうの城』を読みました。
確かに今までの時代小説とは違う読みやすさがありますよね。

映画も楽しみです!
(配役が微妙かもと思うのもありますが・・・見てみないと分からないしという気持ちです^^;9

投稿: みゆみゆ | 2010年11月 4日 (木) 21時03分

みぃみさん、こんにちは!

この作品、時代小説にありがちな取っ付きにくさはないですよね。
そのあたりが売れてる理由かもしれません。
時代小説は読み慣れていない方にはハードル高いイメージがあるので、本作品のようなところから今まで読んでいない人が興味もってくれると嬉しいです。

投稿: はらやん(管理人) | 2010年8月 1日 (日) 15時46分

こんにちは(^^)。トラックバック、ありがとうございます♪。

1969年といえば!。
アポロ11号が人類初の月面着陸した年ですよね?。激しく反応してしまいました(^^;)。

人の名前を覚えるのが苦手な私にとって、似たような和名が多く登場する時代小説は、登場人物の相関関係を確認しながら読み進める必要があるので、結構大変なのですが。。。

この本は、とっつきやすく、ある時点を過ぎてからは、怒濤の勢いで読み進めました。

行動一つ一つが、起こりうる事象への対策も施してあった点に「ほぅ。」と感嘆しきりでした。

損得感情や利とは無関係に周りが協力してくれる長親の「ひととなり」、なーんも考えていないような行動が実はとても深い影響力を持つ「潜在能力」、と、それらに呼応する彼の治める地に住む家臣・人民達の姿は、読んでいて、とても清々しかったです。

ちなみに。。。映画化の情報を得て以来、萬斎さんファンの私は、長親の舞に期待感が高まりまくっています(笑)。

投稿: みぃみ | 2010年8月 1日 (日) 08時22分

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