「鈍獣」 2倍速ぐらいがちょうどいい
主演の浅野忠信さんがいつもとは全く違うタイプのキャラクターである「凸やん」を演じていましたが、意外にもこれが妙に合っています。
そもそも凸やんというキャラクターが、そうそう見かけないタイプですが。
凸やんは言わば究極のKY男といったところでしょうか。
彼の幼なじみである江田っち(北村一輝さん)、岡本(ユースケ・サンタマリアさん)がどんなに凸やんの存在を煙たがっていたとしても、それが本人には全く通じない。
凸やんというのはそういう機微にも鈍感なのですが、さらに肉体的にも鈍感。
幼なじみ二人が凸やん殺害を企てますが、毒を飲ませようが車で牽こうが全く凸やんは死なない。
殺されようとしているのにすら気づかない。
このあたりのクセのあるキャラクター造形は、クドカン脚本ならではです。
浅野忠信さん以外の出演者である、北村さん、ユースケさんは相変わらず濃いキャラクターが似合います。
というところでキャラクターとか、設定ではかなりおもしろくなる要素を持っていた作品でした。
ではおもしろかったかというと、あんまりおもしろくないというのが正直なところ。
そこは何故かというとテンポの悪さだと思います。
最近邦画などでは「ユルい」タッチの作品が多くなってきていると思います。
三木聡さんとか、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんとかなどの作品は独特の間の笑い、ナンセンスなユーモアみたいなものがあり、不思議なおもしろさを持っています。
けれどもこの「ユルさ」というのをコントロールするのはかなり難しいような気がします。
これをコントロールする術は天性のものと言っていいかもしれません。
本作についても凸やんの空気の読めなさみたいなところを間で表現し、おかしくしようとしているように見えるのですが、これが「ユルい」感じではなく「ダルい」感じに感じられるのです。
また物語の進行も全体的にモタモタしている感じがありそれも「ダルい」という印象に結びついてしまうような気がしました。
ナンセンスなキャラクターが生み出す笑いが、とてももたついているような感じを受けます。
クドカンのこういうクセのあるキャラクターは「ユルい」テンポで描くのではなく、例えば「舞妓Haaaan!!!」のような疾走感のある描き方をした方が合っているような気がします。
予告で観た時の印象の方がおもしろかった。
それはコンパクトだったからでしょうか。
本作は2倍速ぐらいで見た方がテンポがあっておもしろいかもしれません。
宮藤官九郎脚本作品「舞妓Haaaan!!!」の記事はこちら→

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