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2009年4月29日 (水)

「レイチェルの結婚」 愛情と鬱陶しさと

家族っていうのは、近しいからこそ、なにかもどかしい存在であったりするものです。

バックマン家は長女レイチェルの結婚を迎えようとしていました。
あわせて次女キムは麻薬中毒の治療の施設から家に戻ってきます。
キムを迎えるのは姉レイチェルと父親ポール。
母親アビーは父親とずいぶん前に離婚し、家を出ていて、互いに再婚しています。
久しぶりに会ったにも関わらず、キムもレイチェルも、そしてポールも互いに何か気持ちがすれ違っています。

赤の他人よりも、家族というのは気持ちのすれちがいというのは起こりやすいような気がします。
他人であればしっかりと丁寧に自分が思うことというのを主張することもできるでしょう。
また逆に所詮他人と、割り切った付き合いをしてしまうこともできるでしょう。
けれども家族というのはそういうわけにもいきません。
たぶん互いに自分のことは話さなくてもわかってくれるだろうと思う、家族ならではの甘えもあると思います。
また近くにいるからこそ、ずけずけとした物言いもしにくいと遠慮というのもあります。
なによりも家族だからこそ、自然にある愛情(家族を愛するという気持ちと、愛されたいという気持ちと)というものがあるわけで、離れたままでもいられないわけです。
そのような家族ならではの甘え、遠慮、また愛情みたいなものが、バックマン家の家族には見えます。
家族というのは、互いに反抗する心と、許し合う心というアンビバレントな心情を持っているものなのかもしれません。
次女キムは10代の頃、麻薬を使っていたときの不注意で、幼い弟を死なせてしまいます。
彼女はそれにずっと罪の意識を感じています。
キムは家族も心の奥底ではずっとそのことで自分を責めていると思っています。
だから家族に対して反抗的であり、またそれでも家族の愛情と許しを求めてしまうのです。
長女レイチェルは、そんなキムのことをずっと心配し、また両親たちに気を使い、いい子であろうとしてきたのでしょう。
でもいい子であるが故に、特に父親が問題児であるキムのことばかりを心配しているのが、ずっと心の中にしこりとなっています。
父親ポールはキムを心配するあまりに彼女に対して過保護のような状態になっています。
それは保護をするという父親としての優しさもあるかもしれませんが、問題児であるキムが信用できず目をはなせられないということもあるように思われます。
実母アビーは、娘たち夫をおいてバックマン家から逃げ出してしまったいうような負い目があるように感じました。
だから彼女は娘の結婚を祝福したいという気持ちもありながらも、なにか遠慮がちです。
キムにも一定の距離感をとろうとしているようにも思えます。
家族が互いに感じる愛情と、鬱陶しさみたいなアンビバレントな気持ちが伝わってきました。
これはたぶんどなたも少なからず感じる気持ちだと思います。
映画ではそのような家族それぞれのグラグラと揺れている気持ちというのが、何か解決をするというわけではありません。
レイチェルの結婚の前後の数日を描き、そして家族はまた自分の居場所に戻っていきます。
たぶん家族というのはこうやって日々の生活の中で自分と家族の気持ちに折り合いをつけながら生きていくものなのかもしれません。
愛情と鬱陶しさを感じながら。

アメリカ映画らしくない題材な感じがしました。
なんだか山田洋次さんあたりが撮っても変じゃない感じだと思いました。
アメリカでも日本でも、家族っていうものがお互いに持つ気持ちっていうのはそんなに変わらないものなのかもしれないですね。

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コメント

sakuraiさん、こんにちは!

家族っていうのは近しい関係だけに、折り合いをつけていかなくてはいけないのですよね。
昨日観た「プール」もそんな話だったなあ。
確かにアメリカ人というのは、家族とはこうあるべきという理想の姿がありますよね。
週末のパーティとかバーベキューとかで家族一緒なんていうのも映画ではよく描かれます。
でもああいうの苦手な人っているはずなんですよね。
僕なんかはめんどうくさくてまっぴらごめんなんですけど。
社会や価値観がああいう家族を要求しているとは思うのですけれど、それになじめない人もいるっていうことをリアルに描いている作品なのかもしれませんね。

投稿: はらやん(管理人) | 2009年10月18日 (日) 06時03分

だいぶ前にご覧になったようですのに、スイマセン。
ありがとうございます。
家族のあったかさとうざったさ。
どっちも必要であり、邪魔なもので、捨て去るわけにもいかない。
折り合いをつけて生きていかなければならず、ほとんどの人がそうやって生きてるんですが、そうできない人もいる・・そんな感じですかね。

私もこの映画は、とってもアメリカ的に感じました。
こうあらねばならない・・という呪縛にとらわれてるアメリカ人に姿が見えるような気がしました。

投稿: sakurai | 2009年10月17日 (土) 20時27分

スワロさん、お久しぶりー!

家族ってそういうものかもしれないですねー。
うちも微妙かも。
たまに実家帰っても、なんとなくすぐ帰っちゃうんです・・・。
社会人になってから家を離れて暮らしているから、家族でいたときより今の生活の方が長いんですよねー。
そういうどこの家族でもあるような微妙な空気っていうのが、痛々しいほど出ていた感じがします。
アメリカって大家族っていう感じがありますけど、いろいろ家族の問題あるんでしょうね。

投稿: はらやん(管理人) | 2009年9月26日 (土) 18時20分

はらやんさん、おはようございます。
そして、かなーりお久しぶりです(苦笑)

マイペース更新を打ち出してからマイペースすぎるくらいで
映画を見てもほとんどの作品を記事にするのをスルーしてきましたが
今回は久々に積極的に「ブログ記事を書きたい!」と思う作品でした。
それだけ心に響いたのだと思います。

相変わらずはらやんさんの記事は「うんうん」とうなづきながら読んでしまいます。
世間では家族のや親子の絆は何よりも強いと思われがちですが
でも、とても微妙で繊細な関係性でもあるんですよね。
わたしの家族もとても微妙な関係性です。
一度ヒビでも入ろうものなら修復よりも崩壊のほうが早いのかもしれません。
この作品では家族であることの痛々しさが本当によく伝わってきて
わが身のように辛かったです。

はらやんさんはアメリカらしくない題材とおっしゃいましたが
わたしはむしろアメリカらしいと思いました。
機能不全家族にまつわるトラブルは現代アメリカの特徴と思います。

投稿: スワロ | 2009年9月26日 (土) 06時47分

rose_chocolatさん、こんにちは!

家族同士だから感じる苛立ちみたいなものは、みなさん少なからず同じように感じたことがあるんじゃないですかね。
そうしてそういう風に感じることの後ろめたさみたいなものも。
このあたりの、どの家族にもある日常の感情みたいなものがよく表されている作品だなと思いました。

投稿: はらやん(管理人) | 2009年5月 6日 (水) 07時02分

これ、いろんな登場人物に感情移入ができたかもしれません。 レイチェルが感じる苛立ちにも、キムが感じる孤独感にも、どっちにも。 
各人に、どこかで必ずご都合主義が現れる所なんかも、何気に今のドライな家族を現わしていました。

投稿: rose_chocolat | 2009年5月 5日 (火) 23時32分

ノラネコさん、こんにちは!

確かにアメリカ映画というより、ヨーロッパ映画のテイストがありますよね。
ジェニー・ルメットはシドニー・ルメットの娘さんなんですよね。
1作目より良質の脚本で、さすがカエルの子はカエルと言ったところでしょうか。
これから注目したいと思います。

投稿: はらやん(管理人) | 2009年5月 5日 (火) 17時08分

家族だからこその壁ってありますよね。
特に女姉妹同士は、男にはうかがい知れない葛藤があったりするのかも。
冒頭からラストの落とし方まで、まるでヨーロッパ映画の様なセンスがありました。
脚本のジェニー・ルメットは今後要注目ですね。

投稿: ノラネコ | 2009年5月 4日 (月) 22時55分

KLYさん、こんばんは!

すれ違いっていうのは近しい家族だからこそ起こるのかもしれません。
それはけっしてなくなることはなくて、この映画のラストですべてがうまく決着つくわけでもありません。
でも、それが家族なのかなとも思います。

アン・ハサウェイは上手くなりましたよね。

投稿: はらやん(管理人) | 2009年5月 1日 (金) 22時15分

時には口汚く罵られたほうが心の重荷が軽くなること
ってあるもんです。家族の愛情が、ほんのちょっとその方向が違っていたがために、擦れ違いを招いてしまったのかなと、そう感じました。

だからこそ、本音で語り合えたとき、みなそれぞれショックを受けますが、レイチェルのあの幸せ一杯の結婚式が迎えられたのだと思います。

アン・ハサウェイが随分上手くなったなぁと思いましたよ。(笑)

投稿: KLY | 2009年4月29日 (水) 18時48分

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