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2009年4月25日 (土)

「ゴジラ(1954年)」 神格化のプロセス

今更説明する必要などないほどに有名な日本発の怪獣映画で、国内国外を問わず数えきれないほどの人々に影響を与えた作品です。
今までに、これまた数えきれないほどのレビューが書かれていると思われる作品の評価に、自分が付け加えることなどはなにもないのですが、とりあえず観た映画については書くと決めているので、自分なりに試みてみようかと思います。
「ゴジラ」がビキニ環礁の核実験で被爆したという第五福竜丸の事件をきっかけに作られたというのは有名な話です。
ですのでゴジラは「核の落とし子」という言われ方もします。
またその後のシリーズの作品で人間の築いた文明社会に破壊の限りを尽くすという印象があったので、個人的には「自然の怒り」というイメージを持っていました。
けれども第一作の「ゴジラ」を改めて観てみると、ゴジラという存在自体には後々持ってくるようなキャラクター性というものはまだありません。
当然作品としてはそこに科学というものを無批判に信望することへの警笛、作られた当時まだ残っている戦争の生々しい記憶などというテーマはあるかと思います。
けれどもそれは作品が発しているメッセージでありますが、ゴジラという存在自体が発しているものではまだなかったのです。
ゴジラが「自然の怒り」というような人間的な感情のようなものを発しているとか、または「荒ぶる神」のような俯瞰した視点を持っているかというと、そこにはそのようなものはありません。
ゴジラが破壊を行う理由はわかるわけもなく、それは人間では抵抗できないほどに強力な災厄として描かれます。
台風や地震などの人間の力ではコントロールしようのない大災害と同じようなものと言っていいでしょう。
ただ人間というものは、そこにはメッセージ等の意味などない自然現象にも理由を付けて理解したくなるものです。
台風に風神をみてみたり、地震になまずをみてみたり。
そこに何か理由やメッセージがあるはずだという解釈を試みようとするのが、人間です。
ゴジラという存在が、その後様々な解釈を受け、シリーズ化をされながら意味を付加されていく中で、段々と「荒ぶる神」としてのキャラクターを持ち始めていくのは、なにか自然現象が神格化していくプロセスを見ているような気もします。

あえて「ゴジラ」という作品をひねった視点で観てみた次第です。
有名な作品のレビューを書くのは難しい・・・。

ゴジラシリーズ最終作品(といわれる)「ゴジラ FINAL WARS」の記事はこちら→
アメリカ版「GODZILLA」の記事はこちら→

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コメント

樹衣子さん、こんばんは!

神話というのは理解できなかった自然現象を説明する試みなんですよね。
そういう意味では科学も同じかもしれません。
その科学技術が、自然に悪影響を与え、そしてまたそれが人間にさらに大きな影響を与える。
何か皮肉なものです。

確かにアイパッチと芹沢博士ですよねー。
「ワルキューレ」のトムは髪型も似ていたような気がします。

投稿: はらやん(管理人) | 2009年5月 4日 (月) 19時36分

こんにちは。1954年製作の『ゴジラ』は、かなり好きな作品なのでコメントをさせていただきます。

>人間というものは、そこにはメッセージ等の意味などない自然現象にも理由を付けて理解したくなるものです。

なるほどっっ、確かにおっしゃるとおりですね。ただ最近の自然現象も人間の行いが生み出した災厄と考えられる現象もありますので、そういう意味では『ゴジラ』のテーマーはなかなか深いです。
トム・クルーズのアイパッチを見て、つい『ゴジラ』の芹沢大助博士を思い出してしまいました。

投稿: 樹衣子 | 2009年5月 4日 (月) 16時56分

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